ご予約はこちら
045-932-5151
2020年1月10日

乳腺腫瘍切除術

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍とは、犬では2番目に多く発生し、猫でも3番目に多く発生する腫瘍であり、臨床家が頻繁に目にする腫瘍の一つです。犬では約半数が悪性であり、猫ではその8~9割ほどが悪性と診断される腫瘍で、早期の発見と摘出が重要となります。治療が遅れると、自壊や多発、領域のリンパ節への転移などを起こす恐れがあります。
(伴侶動物治療指針 212-220p 2013.1 緑書房 より)

ダックスフンド(ミニチュア) 14歳 未避妊雌
主訴:左第3乳腺の腫瘤
身体検査でしこりを確認。大きさや熱感、疼痛を確認したのち細胞診検査を実施、その結果『乳腺癌の疑い』と診断されました。そのため、レントゲンによる肺転移のチェックを含めた術前検査を実施。その後、左側乳腺全摘出に加えて、腫瘤の存在を確認した右第3乳腺の局所摘出、左側腋窩リンパ節と鼠径リンパ節の摘出を行いました。
結果:『乳腺癌(単純型)』
※各リンパ節には転移はありませんでした。
※写真は手術中の画像です。

術後は良好で、2日入院したのち退院しました。今後は1か月ごとの健診をお願いしています。

今回の症例では14歳と高齢でかつ未避妊ということで、乳腺腫瘍の発生しやすい条件が満たされていました。過去の論文で、犬では初回発情前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍の発生率が0.05%になり、初回発情後に行うと8%、2回目の発情後以降に行うと26%となり、2回目の発情前に避妊手術を行う場合は乳腺腫瘍の発生率が下がるという報告が出ています。また猫では未避妊猫と比較し、6ヶ月齢以内の避妊で9%、1歳までの避妊で14%程度まで発生率が下がると言われています。それに加え、子宮蓄膿症などの生殖器疾患の予防にもつながるため、若いうちに避妊手術を行うことは重要であると考えられます。

その他の記事

  • 尿石症

    尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…

    3年前
  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    4か月前
  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    3年前
  • 肝生検

    健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…

    3年前
  • 僧房弁閉鎖不全症、心原性肺水腫

    僧房弁閉鎖不全症
    心源性肺水腫 心源性肺水腫とは、僧帽弁閉鎖逆流症(MR)が発端となり呼吸困難や湿性の咳を引き起こし、死に至ることもある疾患です。
    治療は…

    3年前
  • 肺高血圧症

    今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension)』です。
    肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い疾患です…

    3年前
  • 腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例

    腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…

    6か月前
  • 気管支鏡を実施した猫の症例

     呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…

    4か月前
  • 膝蓋骨脱臼

    膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…

    3年前
  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    6か月前