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麻酔科
しょう動物病院 麻酔科

初めに動物の場合、手術はもちろんですが、検査を実施する際にも麻酔が必要になることがあります。症例の性格にもよりますが、超音波検査やX線検査などでも診断的価値のある画像を得るためには可能な限り動物を不動化することが必要です。特にCT検査やMRI検査、内視鏡検査などは人では無麻酔で実施することが多いですが、動物では全身麻酔がほぼ必須になります。その他にも歯科処置でも人では局所麻酔のみでの実施が可能ですが、動物では全身麻酔が必要になります。

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このように獣医療では人と比較して、診療を行っていく上で全身麻酔をかける機会が多いです。麻酔と聞くと不安に感じられるご家族が多くいらっしゃると思います。実際のところ人でも100%安全な麻酔はありません。
一般的な麻酔リスクとしてアメリカ麻酔学会(ASA)が定めているリスク分類がありますが、犬や猫におけるASA分類ごとの死亡率は表の通りです(あくまでも1例です)。

麻酔科

この論文ではClassⅠでは死亡率が0になっていますが、実際にリスクが0ということはありません。この麻酔リスクを少しでも0に近づけるための努力として当院で実施している麻酔をご紹介します。

バランス麻酔・神経ブロック

全身麻酔をかける上で重要な要素は鎮静(意識消失)、筋弛緩(不動化)、鎮痛です。現存する麻酔薬ですべての効果がバランス良く出る薬はありません。また、動物の状態や実施する検査や手術などにより、どの要素がどの程度必要なのかは大きく異なります。1種類の薬で全身麻酔を実施することは不可能ではありませんが、薬の量が増えてしまい、副作用にも注意をしなければなりません。当院では動物の状態に合わせて、何種類かの薬を組み合わせて使用することで相加・相乗効果によりそれぞれの薬の量を減らし、副作用が最小限になるように努めています。その中で代表的なものが神経ブロックです。人では当たり前のように実施されている神経ブロックですが、獣医療ではなかなか普及していないのが現状です。安全な麻酔を実施するには局所麻酔を用いた神経ブロックや硬膜外麻酔などの区域麻酔を併用することで他の鎮痛薬や麻薬の量を減らすことができ、術後の痛みにも有効です。当院では上の写真にあるような神経刺激装置を使用して、狙った神経の近くへ局所麻酔を浸潤させて部分的な痛みをブロックします。

麻酔器

人間用の人工呼吸器が一体となっている麻酔器です。ベローズ式の人工呼吸器により、細かな設定が可能で体重の小さな症例から大きな症例まで人工呼吸が可能です。また、換気モードの設定を変えることで麻酔覚醒までのウィーニングをスムーズに行えます。

エアーコンプレッサー

エアーコンプレッサー

一般的に麻酔中には低酸素にならないように高濃度酸素を吸入させます。しかし、100%に近い高濃度の酸素を長時間吸入することで酸素中毒を起こす可能性があります。(詳細は別のページで紹介しています)当院ではエアーコンプレッサーを用いて高濃度酸素に空気を混ぜることで酸素濃度を調整し、酸素中毒を防いでいます。また、麻酔から覚醒する際に徐々に酸素濃度を下げていき、術後に酸素吸入が必要な状態かどうかを確かめることもできるため、より安全に麻酔から覚醒することができます。

動脈留置(観血的血圧測定)

  • 動脈留置(観血的血圧測定)

一般的な血圧測定は人の健康診断で実施するようなオシロメトリック法という方法で測定をします。オシロメトリック法の利点は非侵襲的なところで動物に痛みや傷をつけることなく、血圧の測定ができます。デメリットとしては測定に時間がかかることと、毛のある部分や細い部分に巻く場合、血圧が低い場合などでは測定値が不正確になることが挙げられます。当院では麻酔リスクの高い症例や血圧の変動が激しいと予想される手術の際には動脈にカテーテルを設置し、観血的に血圧を測定するようにしています。この方法の利点はリアルタイムに血圧の変動を感知できるので、手術操作に対してどのように血圧が変動するのか、使用した薬剤への反応はどうかなどをより正確に認識できます。動脈へのカテーテル設置は一般的な静脈へのカテーテル設置よりも技術が必要になります。


このように当院では動物や疾患ごとに安全な麻酔を実施することを心がけております。病気を持っている、高齢なため麻酔をかけるのが難しい、手術ができないなどでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。