ご予約はこちら
045-932-5151
2023年7月20日

混合ワクチン

コロナの影響によって”ワクチン”という言葉をよく耳にするかと思います。わんちゃん、ねこちゃんと一緒にいると、はがきなどによって混合ワクチンのお知らせが届くと思いますが、単味、2種、3種、5種、7種、8種、10種など様々な種類があり、どれを接種してあげたらいいか分からないという方も多いと思います。ここでは、そんな混合ワクチンについて簡単にですがご説明したいと思います。

 

<ワクチンとは?>

そもそも”ワクチン”とは、感染症の予防を目的としたもので、予防のために必要な獲得免疫を動物に賦活する薬剤(液体)のことを言います。このワクチンには、”コアワクチン”と呼ばれるものと”ノンコアワクチン”と言われる2つのものが存在します。

 

コアワクチン:すべてのわんちゃんまたは猫ちゃんに接種するように勧告されているワクチンのことを言います。

※・感染症の症状が非常に重篤になるもの

 ・人への感染リスクがあり、人の健康を害する危険があるもの

 ・その感染症が広く流行しており、容易に伝播して多数の動物に被害が広まる危険性があるもの

                            などの観点から”コア”とされています。

 

ノンコアワクチン:個々の動物の住環境や病原体に関する情報を考慮し、必要に応じて接種するワクチンのことを言います。

 

 

<わんちゃんの混合ワクチン>

当院では様々な種類のワクチンの中で単味、PUPPY DP、5種と7種のワクチンをご用意しております。

今回はこの単味、PUPPY DP、5種と7種のワクチンについてご説明します。

コアワクチン

ジステンパーウイルス:発熱、下痢、鼻炎、結膜炎、呼吸器、消化器症状および神経症状など様々な症状を示します。特に子犬では死亡率も高い感染症とされ恐ろしい感染症の一つです。

犬伝染性肝炎:アデノウイルス1型により引き起こされる感染症で、下痢、嘔吐、食欲不振などを示し、肝炎を引き起こします。

犬伝染性喉頭気管炎:アデノウイルス2型により引き起こされる感染症で、犬の呼吸器症候群(ケンネルコフ)の一つとされています。咳を主な症状とする呼吸器系疾患を引き起こします。混合感染などにより重篤化することがあります。

犬パルボウイルス感染症:激しい下痢、嘔吐を引き起こし、食欲がなくなっていき衰弱死してしまう腸炎型と言われるものと、子犬に対して突然死を引き起こしてしまう心筋炎型と言われるものがあります。ジステンパーと並んで子犬にとって死亡率の高い恐ろしい感染症の一つです。

 

ノンコアワクチン

犬パラインフルエンザウイルス感染症:犬の呼吸器症候群(ケンネルコフ)の一つであり、咳、鼻水などの風邪のような呼吸器症状を示します。

レプトスピラ感染症:尿毒症、腎炎などを引き起こすカニコーラ型、肝障害による黄疸などの症状を引き起こすイクテロヘモラジー型などがあります。症状によってはたった数日で死に至ってしまう恐ろしい感染症です。また、人にも感染してしまう人獣共通感染症の一つとなります。

 

 

<猫の混合ワクチン>

当院では、様々な種類のワクチンの中で、3種と5種のワクチンをご用意しております。

今回はこの3種と5種のワクチンについてご説明します。

※当院では5種ワクチンについてはお取寄せという形を取らせていただいております。

フェリバック L-3 | 共立製薬株式会社

コアワクチン

猫ウイルス性鼻気管炎:ひどいくしゃみ、咳、鼻炎などの呼吸器症状や結膜炎を引き起こします。高熱が出て、食欲がなくなり、鼻水と涙で顔中がクシャクシャになり、典型的な風邪の症状を示します。

猫カリシウイルス感染症:はじめはくしゃみ、鼻水、発熱などの風邪のような症状が見られ、症状が進むと舌や口の周辺に潰瘍が出来たりします。時には急性の肺炎を引き起こし、死に至ることもあります。

猫汎白血球減少症:白血球が極端に少なくなってしまう病気で、高熱、嘔吐、食欲不振、下痢による脱水が引き起こされます。体力のない子猫などは、たった一日で死に至る恐ろしい病気です。

 

ノンコアワクチン

猫白血病ウイルス:子猫などの免疫が不十分な場合は、免疫不全症、重度の血球減少、リンパ・造血系腫瘍の発生などが引き起こされ、重篤な症状を示します。

猫クラミジア感染症:くしゃみ、結膜炎、結膜浮腫、眼からの膿性分泌物の排出などの症状を示します。混合感染により症状が重篤化する恐れもあります。

 

 

<ワクチネーションプロトコルとは?>

米国動物病院協会(AAHA)および世界小動物獣医師会(WASAVA)によってワクチンに対するガイドラインが提唱されています。このガイドラインによって、わんちゃん、猫ちゃんのどの時期や期間にワクチンを接種してくださいというのが推奨されています。この推奨されている時期や期間に沿って考えられたプロトコルのことをワクチネーションプロトコルと言います。

  

わんちゃんの場合

コアワクチンとして指定されている4種のウイルスが含まれているワクチンに関しては、通常、生後6~8週以降のわんちゃんへ3~4週間隔で2回接種することが推奨され、移行抗体によるワクチン抗原への干渉を考慮して生後16週以降に再度接種する。つまり、合計3回以上接種することが推奨されています。

 

 

猫ちゃんの場合

猫ちゃんの場合もコアワクチンとして指定されている3つのウイルスに関しては、わんちゃんと同様です。通常、生後6~8週以降の猫ちゃんへ3~4週間隔で2回接種することが推奨され、移行抗体によるワクチン抗原への干渉を考慮して生後16週以降に再度接種する。つまり、合計3回以上接種することが推奨されています。

 

 

<ワクチン接種前の注意事項>

発熱

元気および食欲がない

病気の治療中または病気の治療直後

上記のようなことがある場合にはワクチンの接種はお勧めできません。

また、免疫介在性疾患てんかん発作癌の治療中に関しては獣医師にご相談ください。

 

 

<ワクチン接種後の注意事項>

ワクチン接種後は激しい運動は避けていただき、2・3日はシャンプーや入浴を避け、接種後の免疫ができるまでの約2~3週間は、他の犬や猫に近づけないようにしてあげてください。また、ワクチン接種後は、元気や食欲がなくなったり、軽度の発熱、便が柔らかくなる場合もありますが、普段と違った様子が見られるようでしたら、すぐにご連絡ください。

 

 

<ワクチン接種後の副作用(副反応)>

ワクチン接種後にはアナフィラキシー反応や、ワクチンアレルギーといった症状が見られることがあります。このような症状が見られましたら、近くの病院へすぐに向かってください。

 

アナフィラキシー反応:通常、ワクチン接種後30分以内(稀に数時間後)に見られ、倒れる、ふらつく、舌色が悪い(チアノーゼ)、呼吸が荒いなどの循環器や呼吸器症状を示すことがあります。

 

ワクチンアレルギー:顔面の腫脹(ムーンフェイス)、むくみ、痒み、紅斑、蕁麻疹などの皮膚症状、嘔吐や下痢などの消化器症状を示すことがあります。

  

接種部位肉腫(猫のみ):接種してから数カ月~数年後に繊維肉腫などの腫瘍が形成されてしまうことがあります。

 

 

<ワクチンの追加接種について>

ワクチンによる免疫は一生続くものではありません。、免疫を持続させるためにも定期的な追加接種をしてあげることにより、免疫を高く維持しておくことが大切になります。

 

 

<ワクチン抗体価>

ワクチン接種後にはウイルスと戦うための”抗体”と呼ばれるものが作られますが、この抗体は時間とともに低下していってしまいます。近年では、この”抗体”がどのくらいあるのかを検査することが可能となり、これにより、どのくらい抗体が体内に残っているかを調べることが可能となりました。

                   (富士フィルム HPより)

犬だとコアワクチンとされている、

ジステンパーウイルス

パルボウイルス

アデノウイルス(犬伝染性肝炎、犬喉頭気管炎)

 

猫だとコアワクチンとされている

パルボウイルス(猫汎白血球減少症)

カリシウイルス

ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎)

それぞれ3つのウイルスに対する抗体価が測定可能となっています。

 

ガイドライン上では、最終ワクチン接種後4週以降なら抗体価の測定が可能とされています。また、3回目のワクチン接種後、毎年抗体価を測定し、抗体価をもとにワクチンを接種の有無を判定する事が推奨されています。

 

ワクチンを接種することが出来ない場合や、毎年ワクチンを接種するのは負担になってしまうという方もいらっしゃると思います。その場合には、”ワクチン抗体価”を測定して獣医師とご相談されることをお勧めします。

 

 

<おわりに>

犬パルボウイルス感染症やジステンパーは子犬にとっては死亡率が高く非常に恐ろしい感染症です。また、猫においてもワクチンを接種してあげることで、もし感染してしまっても、非常に軽い症状で済むこともあります。そのため、早くにワクチンを接種して早くから免疫をつけてあげることが非常に大切となります。自分たちのためにも、なにより大切なご家族であるわんちゃん、ねこちゃんを守るためにも、早めに接種してあげましょう。

その他の記事

  • 狂犬病予防接種

    ”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…

    10か月前
  • 炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症

    炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
    慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…

    4年前
  • 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫

     胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁の貯留を行う臓器で、方形葉と内側右葉に埋まるように位置しています。胆嚢から発生する疾患には胆石、胆泥、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢炎などがあります。…

    2年前
  • 肝生検

    健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…

    4年前
  • 避妊・去勢手術のメリット・デメリット

    新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…

    6か月前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    8か月前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    8か月前
  • 当院では【術前検査】をお勧めしています

    術前検査とは、手術の前に実施させていただく検査のことになります。術前検査と聞くと、体の中の異常を調べるスクリーニング検査のイメージが強いかと思われます。しかし、手術をするに…

    8か月前
  • 心室中隔欠損症(VSD)

     心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。  全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…

    2か月前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    4年前