2020年3月25日
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています。脱臼の度合いや臨床症状よってグレード1から4までの重症度分類が存在し、それに加えて、年齢・犬種・体重・合併症の有無を考慮し治療法を選択していきます。治療法としては大きく分けて2種類あり、痛み止めやサプリメントを併用した保存療法(内科治療)と、外科的な治療法があります。治療が成功すれば臨床症状の消失が期待できる疾患です。
(伴侶動物治療指針 298-307p 2013.1 緑書房 より)
フレンチ・ブルドッグ 1歳 去勢雄
主訴:散歩中の右後肢の挙上
触診の結果、膝蓋骨脱臼のグレード1~2程度と判断し、疼痛が認められないためサプリメントを使用した保存療法を実施しました。しかし、6週間経過しても右後肢の挙上に改善が認められなかったため、飼い主様と相談し、手術を実施しました。
手術の内容といたしましては、縫工筋・内側広筋離断、滑車溝造溝、関節包縫縮、脛骨粗面転移の4つを実施しました。
※写真は手術中の画像と、ピンによって固定した後のレントゲン写真です。
術後は徐々に臨床症状が改善したものの、手術部位に液体貯留が発生したため、ピンを抜く処置を行いました。その後の経過は良好です。

今回の症例は若齢であり、内科療法による臨床症状の改善が認められないため手術を実施した1例でした。疼痛は出ていなかったものの、年齢を重ねていくと外科的な治療に対する反応が悪くなっていくため、臨床症状が出ている場合は早めの対処が重要であると考えられます。

その他の記事
-
循環器科
循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがありま…
3年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前
-
肺高血圧症
今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)』です。
肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い…6年前 -
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
1年前 -
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~治療編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症例で必要な治療について解説していきます。 副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、生涯にわたる投薬が必要になりますが…
4か月前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
2年前 -
全耳道切除・鼓室法切開
慢性外耳炎・中耳炎 慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…
4年前 -
腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術
潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…
2年前 -
副腎腫瘍
副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…
6年前 -
”麻酔前検査”をお勧めしています
手術をするにあたって、人の場合と同様に犬ちゃん猫ちゃんにも全身麻酔をかける必要があります。麻酔前検査では、この全身麻酔が安全にかけられるかどうかを評価するための検査となり…
3年前
