ご予約はこちら
045-932-5151
2023年7月8日

心タンポナーデ

 心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、意識の消失や突然死を起こすことがある危険な状態です。

 今回は心臓病の悪化から左房破裂を起こし、心タンポナーデになった症例をご紹介します。

 症例は9歳10ヵ月のチワワさん(去勢雄)。もともと他院で心臓病と診断され、お薬を飲んでいる子でしたが数日前から呼吸が荒く、当日の朝にはぐったりしてきたとの事で来院されました。

 来院時にはふらついて立ち上がれない状態で、オシロメトリック法による血圧測定では 79/41(50)mmHgと低血圧を呈していました。FAST検査を実施し、心タンポナーデを確認し、心嚢水の抜去を実施しました。

 

心タンポナーデの超音波検査の動画

抜去した心嚢水:HCT=18.9%

 心嚢水を抜去して呼吸状態は落ち着き、血圧も維持されるようになりました。

抜去後は酸素室で管理し、状態が安定したのちに再度心臓の超音波検査を実施しました。

心臓内には出血を起こすような腫瘍は確認できず、重度の僧帽弁閉鎖不全症が認められたため左房破裂による心嚢水の貯留と診断致しました。

心臓の治療を強化して数日で酸素室から離脱でき、無事に退院していきました。

 現在も予断を許さない日々は続きますが、安定した生活を送っています。

心臓病は臨床徴候がなくても、急変する可能性のある怖い病気です。早期発見と定期的な検診を心がけましょう。

その他の記事

  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    1年前
  • 内視鏡で誤食した釣り針を摘出

    釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…

    2年前
  • 狂犬病予防

    ”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…

    2年前
  • フィラリア予防

    毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要なの…

    1年前
  • 先天性門脈体循環シャント

     先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…

    12か月前
  • 腹腔鏡下肝生検

     ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …

    9か月前
  • 当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します

     皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。  当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…

    2年前
  • 尿石症

    尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…

    5年前
  • 糖尿病性ケトアシドーシス

    糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…

    5年前
  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    1年前