ご予約はこちら
045-932-5151
2024年8月6日

犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫

犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半数以上を占めているとの報告もあります。また、転移率や再発率も高く、基本的には外科治療が必要になってきます。

 

口腔内腫瘍ではTNM分類といった、T:腫瘍の大きさ、N:局所リンパ節への転移の有無、M:遠隔転移の有無の3項目から臨床ステージが決められます。

ステージが低い程生存期間も長くなり、口腔内腫瘍は早期の発見が重要となります。

今回は早期に口腔内腫瘍が発見され、外科治療を実施した症例をご紹介します。

 


症例情報

14歳のラブラドール・レトリーバーの女の子です。口腔内に出来物があるとの主訴で来院。院内での細胞診で腫瘍を疑う細胞が認められたため、精査を実施しました。

 


血液検査

血液検査上は大きな異常は認められませんでした。

 


病理組織学的検査

腫瘤の一部を切除し、病理組織学的検査に提出しました。

結果は悪性黒色腫疑い、免疫組織学的検査の結果と併せて無顆粒性悪性黒色腫と診断されました。

 


CT検査

右下顎後臼歯外側の歯肉に境界不明瞭な造影増強領域が認められました。

病変周囲の歯槽骨には明らかな骨浸潤は認められませんでした。

両側の下顎リンパ節は軽度の腫大は認められるが、内部構造に明らかな異常は認められませんでした。

 


手術写真

術前検査にて合併症や麻酔のリスクが低いと判断したため、下顎部分切除および下顎リンパ摘出術を実施しました。ここからは手術写真と簡単な説明を交えながら手術内容を紹介していきます。

 


摘出病理

病理組織学的検査結果では下顎腫瘍は悪性黒色腫と診断されました。

腫瘍のマージンはきちんと確保でき、下顎リンパ節への明らかな転移は認められませんでした。

 


術後

下顎の一部分を切除したため、切除部分から少し舌が出てしまうようにはなりましたが、食事も問題なく、生活の質は維持できています。このように、わんちゃんでは顎骨切除をしても摂食障害は少ないことが多いです。

 

腫瘍の種類によっては、たった1週間という短い期間でどんどん大きくなってしまいます。早期の段階では、腫瘍のマージンも確保しやすく予後が長いこともありますが、時間が経つにつれて腫瘍が大きくなり外科治療が困難になる場合があります。そのため、口腔内腫瘍は早期発見・早期治療が重要となってきます。

※腫瘍科に関してはこちらからご覧ください

その他の記事

  • 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬

    胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …

    3年前
  • 犬の口臭の裏に潜むリスクとは?|考えられる原因と対策を解説

    愛犬の顔に近づいたとき、「いつもより口が臭うかも…」と感じたことはありませんか? こうしたニオイは単なる不快な症状ではなく、犬の体の中で起きている異常を知らせ…

    7か月前
  • 副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~

    こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…

    2か月前
  • 猫の子宮蓄膿症は若い子でも発症する?原因と治療について。

    「子宮蓄膿症」とは、避妊手術をしていない女の子の犬/猫ちゃんの子宮に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。 今回は猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。 …

    1年前
  • 先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復

    腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…

    4か月前
  • 最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜

    はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…

    1か月前
  • 肥満細胞腫

    肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…

    3年前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    2年前
  • 犬アトピー性皮膚炎|病態について

    アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…

    1年前
  • 狂犬病予防

    ”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…

    2年前