ご予約はこちら
045-932-5151
2025年5月7日

犬の脱毛|加齢によるもの?病気?

わんちゃんも人と同じように、高齢になると毛の色が変化したり薄くなったりします。これは生理的なものですが、中には病的に脱毛が起こってしまうことがあります。

今回は病的な脱毛について詳しくお話していきます。

====================================

脱毛の種類

①痒みを伴う脱毛

  ⑴感染性  ➡外部寄生虫(ノミ・ダニ)、細菌、真菌(皮膚糸状菌) など

  ⑵非感染性 ➡アトピー、アレルギー など

②痒みを伴わない脱毛

  ⑴左右対称性・・・内分泌疾患(ホルモン疾患) など

  ⑵左右非対称性・・・腫瘍性疾患、虚血性疾患、遺伝的要因 など

痒み(皮膚炎)を伴わない脱毛の原因として、内分泌疾患(ホルモン疾患)が代表的です。甲状腺機能亢進/低下症、副腎皮質機能亢進症、性ホルモン異常などが挙げられます。

パターン脱毛(遺伝的要因)と診断した症例

====================================

脱毛がみられたときに行う検査

脱毛がある場合は、以下の検査を行い診断を進めていきます。

①抜毛検査

病変の中心部と辺縁部の毛を抜いて顕微鏡で見る検査です。この検査では主に毛根と毛先を観察します。

毛根は主に毛周期の観察を行います。毛根は大きく休止期と成長期に分かれており、休止期主体であれば今後毛が生えてこない可能性、つまりは内因性の脱毛の可能性があります。しかし、柴犬など元々休止期毛が大半を占める犬種も存在し、評価に値しないこともあります。

毛先は、裂毛かどうかを観察します。裂毛とは切れている毛のことを指し、痒みや擦れなどの外因性の脱毛である可能性が高いです。

②皮膚掻把検査

皮膚を専用の器具で少し削り、皮膚の内部まで観察する検査です。これでは皮膚内に寄生するダニ(浅部:ミミダニ、ツメダニ 深部:ニキビダニ)を検出するために行います。

③皮膚細胞診

皮膚にセロハンテープやスライドガラスを押し当て、細胞や細菌の観察を行います。

④ウッド灯検査

皮膚糸状菌という真菌(カビ)の検出を行う検査です。ライトを当てると、真菌感染している部分が黄緑色に光ります。特に子猫などの免疫の不十分な子で悪化することが多く、確定診断には次に紹介する真菌培養検査が必要です。             

⑤真菌培養検査

先述のウッド灯検査で真菌感染が疑われる場合に行うことが多いです。毛を抜いて毛根に感染している真菌を培養する検査です。

====================================

このように、「脱毛」と言っても様々な原因があり、その原因を突き止めるのにも様々な検査が必要になります。皮膚だけの問題ではなく、ホルモン疾患などの全身性疾患が隠れている可能性もあります。

特に脱毛だけでなく、「最近お水をよく飲むようになった」「食事量を増やしていないのに太ってきた」「年のせいかずっと寝ている」などの症状が付随している場合は特に全身疾患の可能性が高くなるので、少しでも気になる症状がある場合はお気軽にお尋ねいただければと思います。

 

 

⇩⇩合わせてこちらもご覧ください⇩⇩

犬アトピー性皮膚炎|皮膚炎の病態について

犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

その他の記事

  • 犬・猫の去勢手術

    【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…

    2年前
  • 先天性門脈体循環シャント

     先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…

    1年前
  • 2024年の春の健康診断まとめ

    今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…

    11か月前
  • 泌尿器科

     泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。  高齢になると腎臓…

    2年前
  • セカンドオピニオン

    セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…

    2年前
  • 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫

     胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁の貯留を行う臓器で、方形葉と内側右葉に埋まるように位置しています。胆嚢から発生する疾患には胆石、胆泥、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢炎などがあります。…

    3年前
  • 皮膚糸状菌症(真菌感染症)について

    皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌症と呼ばれる真菌(カビの仲間)による伝染性感染症で、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほど報告されて…

    5日前
  • 猫の心筋症:肥大型心筋症(HCM)

    心筋症には4つの代表的な分類が存在します。①肥大型心筋症(HCM)、②拘束型心筋症(RCM)、③拡張型心筋症(DCM)、④不整脈源生右室心筋症(ARVC)の4つに分類されて…

    2年前
  • ワクチンによるアナフィラキシーショック

    毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…

    11か月前
  • 膝蓋骨脱臼の整復

     膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床…

    2年前