ご予約はこちら
045-932-5151
2026年7月29日

口腔内腫瘤に対して下顎部分切除を実施した犬の1症例

犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも、悪性黒色腫は悪性度の高い口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半数以上を占めているとの報告もあります。

口腔内に発生する悪性腫瘍

また、犬に発生する腫瘍の中では、乳腺癌、肥満細胞腫に次いで3番目に多い腫瘍になります。今回は口腔内に悪性黒色腫が発生した犬の症例をご紹介します。

📌目次

症例情報

症例は12歳11カ月の柴犬の男の子です。歯茎の腫れを見つけ、他院にて検査をしたところ、悪性黒色腫と診断され、治療を目的に本院を受診されました。

検査結果

CT検査の結果では、左下顎の犬歯~第1前臼歯領域に造影増強が見られました。また、左下顎リンパ節の腫大および造影増強が認められ、リンパ節への転移が認められました。

CT検査結果

口腔内腫瘍ではTNM分類といった、T:腫瘍の大きさN:局所リンパ節への転移の有無M:遠隔転移の有無の3項目から臨床ステージが決められます。

口腔内腫瘍のTNM分類

この症例ではステージⅡが疑われたため、根治の目的で外科手術を実施することとなりました。

実際の手術写真

ここからは実際の手術写真を用いて手術内容を簡潔に載せていきます。

出血なども認められるため、血が苦手な方はご遠慮下さい。

苦手な方はこちらから結果のページまで飛べます⇨こちら(病理組織学的検査の結果まで飛びます)

下顎部切除-1
下顎部分切除-2
下顎部分切除-3
術後の外観
摘出組織

病理組織学的検査結果

口腔内腫瘍は悪性黒色腫、摘出したリンパ節も同様に悪性黒色腫と診断されリンパ節への転移性病変と診断されました。

病理学的検査の結果

悪性黒色腫を外科手術で治療した場合の生存期間中央値は150~318日、1年生存率は35%以下とも報告されています。

まとめ

本症例では、術後に抗がん剤も開始していますが、術後1年ほど経過しても元気に過ごしています。

口腔内に何かできものが出来てきたや、最近口をやたら気にするなどの場合は口腔内腫瘍の可能性もあります。その場合は、お近くの動物病院さんへぜひご相談下さい。

※他の腫瘍疾患について⇨こちら

Q&A

Q. 悪性腫瘍だった場合は必ず手術が必要ですか?

A. いいえ。腫瘍の種類によっては、放射線治療や抗がん剤などの内科治療、免疫療法などが適応になる場合もあります。

  

Q. 口の中のしこりは出来たら悪性ですか?

A. 必ずしも悪性とは限りません。腫瘍に対して細胞診検査や病理学的検査をすることで腫瘍の種類が分かってきます。

 

Q. 手術以外の選択肢はありますか?

A. はい。腫瘍の種類によっては、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法などの選択肢を取ることが出来る場合もあります。

 

Q. 口腔内腫瘍の場合はどのような症状がでますか?

A. いつもと違う強い口臭、流涎、ご飯を食べにくそうにする、口元や口回りを気にするようになるなど様々な症状が出てくる可能性があります。

 

Q. 予防や早期発見のコツはありますか?

A. 日頃からお口の中を観察しておくことが重要です。また、歯磨きの習慣をつけておくことで、小さな変化に早期に気づくことが出来る場合もあります。

その他の記事

  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    4年前
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?

    最近、” 少し元気がない " や " 食欲がいつもよりない " などの症状が見られることはありませんか? 副腎の病気には機能が下がってしまう、副腎皮質機能低下症(アジ…

    9か月前
  • 犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~検査・診断編~

    こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な検査や診断について解説していきます。 副腎腫瘍では診断するためには様々な検査が必要になってきます。 ぜひ最後までお読みい…

    9か月前
  • 総合診療科

    例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…

    3年前
  • 新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定

       獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…

    2年前
  • 幽門狭窄の症例に対して内視鏡下でポリペクトミーを実施した犬の1例

    ご飯を食べてから時間が経っているのに吐き戻すなんてことはありませんか? 嘔吐という症状はよく認められる症状のひとつなため、どんな疾患でも考えられるものになります。…

    3か月前
  • 尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌) 

    犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…

    2年前
  • かかると大変なフィラリア症や予防について解説

    毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要な…

    3年前
  • 犬の乳腺腫瘍

     犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速…

    3年前
  • 心タンポナーデ

     心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…

    3年前