右骨盤部分切除および断脚を実施した犬の1例を紹介します
四肢(足)に発生する腫瘍は悪性のものが多く、大型犬の中高齢で特に多く見られ、急速に進行していくのが特徴です。症状としては足の腫れや跛行(びっこ)が主な症状になります。
今回は骨盤と大腿部分に悪性腫瘍ができた症例をご紹介いたします。

📌目次


症例情報
7歳8カ月のシェットランド・シープドッグの男の子です。

以前にレントゲン検査にて右股関節領域の不整があり、びっこを引いていたため、大腿骨頭切除術を実施しました。切除部の病理組織学的検査の結果にて、滑膜粘液肉腫と診断されていた症例です。

検査
右の骨盤および大腿骨に骨融解像が見られ腫瘍性変化が疑われました。
そのため、根治の目的で骨盤部分切除および断脚を実施することとなりました。


実際の手術写真










病理学的検査結果
病理学的検査の結果は滑膜粘液肉腫と言われる悪性腫瘍でした。

滑膜粘液肉腫は関節包、腱鞘や滑膜に由来する悪性腫瘍であり、人でも比較的若年層での発生が認められる腫瘍です。犬猫では発生が非常に稀な腫瘍なため、粘液肉腫のみのデータはあまりありませんが、一般的な軟部組織肉腫よりも局所再発や転移が多い傾向にあるため術後は注意が必要となります。

まとめ
術後2カ月が経ちましたが、明らかな再発所見や転移所見はなく、良好な経過を辿っています。

びっこを引いている、最近足が付けなくなったなどの症状がある場合は、悪性腫瘍が隠れている可能性もあるため、早めに獣医師さんと相談しましょう。
※他の整形外科症例⇨こちらから

Q&A
Q. 滑膜粘液肉腫はどんな腫瘍ですか?
A. 滑膜粘液肉腫は関節包、腱鞘や滑膜に由来する悪性腫瘍です。
Q. 滑膜粘液肉腫の治療は?
A. 症例数は少ないですが、放射線療法、化学療法、外科療法などがあります。
Q. 滑膜粘液肉腫の予後は?
A. 悪性度の低い場合は1300日程、悪性度の高い場合は400日程とのデータがありますが、症例数が少なく明確ではないです。
その他の記事
-
うっ血性心不全/心原性肺水腫(犬)
心源性肺水腫とは、僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症などの心臓病によって心臓内の血液の鬱滞が悪化する事により、肺に血液中の水が押し出され呼吸困難を生じる二次的な病態で…
7年前 -
若い子に稀に見られる疾患、先天性門脈体循環シャントとは? │ 早期発見や実際の治療法について
先天性門脈体循環シャントは主に若齢の犬ちゃんや猫ちゃんで稀に認められる病気です。 この疾患は特異的な臨床症状を示さないこともあり、詳しい検査をしないと見つからないこと…
1年前
-
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?
最近、” 少し元気がない " や " 食欲がいつもよりない " などの症状が見られることはありませんか? 副腎の病気には機能が下がってしまう、副腎皮質機能低下症(アジ…
12か月前 -
腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術
潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…
2年前 -
猫の乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…
2年前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
2年前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
3年前 -
べトスキャン イマジストが導入されました!
この度、国内初のAI技術を応用した検査と専門医による診断サービスが可能な"べトスキャン イマジスト"という検査機器が当院に導入されました! …
2年前 -
犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません! ~検査および診断編~
こちらでは、慢性腎臓病(CKD)における必要な検査および診断について解説していきます。 慢性腎臓病には大きく4つのステージがあり、どのステージにいるのかで治療法や予…
9か月前 -
酸素中毒とは? | 酸素濃度は高ければいいわけではない!気を付けたい酸素中毒について
皆さんは "酸素中毒" というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒があ…
4年前
