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2026年2月27日

犬の胆嚢粘液嚢腫について | 進行してから症状が現れる恐い病気でもあります

胆嚢粘液嚢腫とは主に犬で多く見られる疾患で、胆嚢という臓器に可動性の乏しい粘液が過剰に溜まることで発症するとされています。一昔前までは稀な疾患とされていましたが、近年では胆道疾患の中でも最も一般的な疾患となってきています。

胆嚢内に胆泥が溜まる”胆泥症 “という病気では基本的に症状を起こさないことがほとんどですが、胆嚢粘液嚢腫になり、胆嚢破裂にまで至ると命に関わることがあるため、早期発見や早期治療が非常に重要となります。

今回は犬の胆嚢粘液嚢腫について、解説していきます。

📌目次

 

 

胆嚢の働きとは?

 

胆嚢とは、洋梨状のような形を呈しており、犬・猫では肝臓の内側右葉と方形葉の間に挟まれて存在している臓器になります。胆嚢の主な働きは胆汁の貯留になりますが、胆汁の濃縮や酸性化だけでなく、ムチンや免疫グロブリンの付加と言った働きも持っています。

また、貯留している胆汁は消化吸収に重要な役割を持っていて、中でも脂肪の消化吸収を助ける働きがあります。胆汁は消化管における脂肪の吸収を促進させ、コレステロールやビリルビンといった老廃物の排泄も担っている重要な臓器となります。

胆嚢の働きや胆嚢の流れについて

一部の胆汁は直接肝臓から総胆管および十二指腸乳頭を経由して十二指腸に分泌され働きますが、大部分の胆汁は胆嚢に一時的に貯留されます。

胆嚢粘液嚢腫とは?

 

胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質(ムチンなど)が過剰に貯留した状態のことを指します。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうことで胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である”総胆管”という管を閉塞したり、胆嚢が破裂したりしてしまう恐れがあります。

原因とは?

 

これまで、胆嚢粘液嚢腫の発症に関する明確な機序は明らかになっていません。しかし、胆汁と一緒に分泌されるムチン(粘液成分)の分泌量の増加水分の吸収が増加することにより、より粘稠度の高いゼリー状の胆汁物質が増加することによって胆嚢粘液嚢腫へと至ると考えられています。また、胆嚢粘液嚢腫の発症に関連する基礎疾患として、ホルモンの病気(副腎皮質機能亢進症甲状腺機能低下症)、脂質異常症による高脂血症が原因として挙げられています。

よく見られる症状について

 

胆嚢粘液嚢腫に関連する症状は、嘔吐や活動性の低下、食欲不振など非特異的な症状が多く認められます。しかし、初期の段階ではほとんど症状を示さないことが多く、状態の進行とともに症状が出てきたり、重篤化することがあります。

病気が進行することで、胆嚢炎を併発したり、胆嚢からの出口に詰まる胆管閉塞、さらには胆嚢破裂といった状態にまで移行する可能性があります。胆嚢破裂を引き起こすと、胆汁がお腹に漏れることで、胆汁性腹膜炎を引き起こし、緊急性の高い状態になります。この場合は、黄疸(眼や肌が黄色くなる、濃い黄色の尿がでる)や腹痛(胆嚢が破裂することで、漏れ出た貯留物がおなかの臓器を刺激し、激しい痛みを伴うことがある)といった症状が認められる場合があります。

実際の黄疸症例の写真

 

検査および診断について

 

胆嚢粘液嚢腫の診断には血液検査画像診断を組み合わせて行います。

 

血液検査

 

血液検査では、肝酵素の上昇が比較的よく認められますが、必ずしもではありません。閉塞性黄疸や胆嚢破裂といった重症度の高い場合では、肝酵素に加えて顕著なビリルビンの上昇が認められます。一方で、症状が出ていない(無症候性の)胆嚢粘液嚢腫の症例では、血液検査上では明らかな異常が認められない場合も多くなります。

 

超音波検査

 

胆嚢粘液嚢腫の暫定診断は超音波検査に基づいて診断されることが多いです。しかし、症例によっては超音波検査だけでは、胆泥症と胆嚢粘液嚢腫を完全に区別することは困難な場合もあります。

エコーでは、正常な胆嚢は胆汁と呼ばれる貯留液が溜まっており、それが黒く映ります。しかし、胆嚢粘液嚢腫の典型例では、可動性の乏しい胆泥に加え、星状あるいは細かい縞模様の形に見える、いわゆる”キウイフルーツ“様に見えてきます。ただし、このパターンを呈していなくても胆嚢粘液嚢腫と診断される場合もあります。

超音波検査における正常な胆嚢と胆嚢粘液嚢腫の症例の比較

 

治療法について

 

胆嚢粘液嚢腫の治療は、病気の進行度によって大きく2つに分かれます。

内科治療(薬での管理)

胆嚢の破裂リスクが低い場合に選択されます。

主に使われる治療

  • ○ 利胆薬(胆汁の流れを良くする薬)
  • ○ 肝臓保護剤
  • ○ 抗生物質(感染が疑われる場合)
  • ○ 低脂肪食

メリット

  • ○ 手術を避けられる可能性がある
  • ○ 体への負担が少ない

注意点

  • ○ 完全に治るわけではない
  • ○ 進行して突然悪化することがある
  • ○ 定期的な超音波検査が必須

※内科管理中に悪化するケースも少なくありません。

併発疾患の治療

胆嚢粘液嚢腫は

  • ○ 副腎皮質機能亢進症
  • ○ 甲状腺機能低下症
  • ○ 脂質代謝異常

などと関連があると報告されています。
これらの基礎疾患がある場合は、胆嚢粘液嚢腫の治療と並行して基礎疾患の治療を進めます。

外科治療(胆嚢摘出手術)

根本的な治療は胆嚢摘出手術です。

手術が強く勧められるケース

  • ○ 嘔吐や腹痛などの症状がある
  • ○ 胆嚢の壁が壊死している疑い
  • ○ 胆管閉塞がある
  • ○ 胆嚢破裂のリスクが高い
  • ○ エコーで典型的な「キウイフルーツ状」所見が進行している

メリット

  • ○ 破裂のリスクを取り除ける
  • ○ 再発がない

デメリット・リスク

  • ○ 麻酔リスク
  • ○ 術後合併症(胆汁漏、膵炎、DICなど)
  • 破裂した後など、状態が悪化してからの緊急手術はリスクが高い

胆嚢摘出手術の様子

胆嚢摘出術の実際の写真

手術を検討するタイミング

  • 内科治療では
  • ○ すでに形成された粘液を完全に除去することはできません
  • ○ 胆嚢破裂を完全に予防することはできません
  • ○ 進行を完全に止められる保証はありません

そのため、「定期的な血液検査と超音波検査」が必要です。

胆嚢が破裂してからの緊急手術は死亡率が高くなります。

そのため、全身状態が安定している段階での計画手術が最も安全とされています。

当院では

  • ○ 臨床症状
  • ○ 血液検査(肝酵素・ビリルビンなど)
  • ○ 超音波検査所見
  • ○ 全身状態
  • ○ 年齢や併発疾患

を総合的に判断し、内科治療で温存するのか、外科手術をするべきなのか、病態の進行度と全身状態を考慮して適切な治療法をご提案しています。

胆嚢摘出術および総胆管ステントを実施した症例⇨こちら

胆嚢破裂を起こした症例に対する実際の手術⇨こちら

まとめ

 

今回は、日常的に認められるようになってきた胆嚢粘液嚢腫について解説しました。この病気は初期にはほとんど症状が認められず、特徴的なサインがないことが多いです。そのため、早期発見や早期の治療が非常に重要となる病気になります。

早期発見のためには、定期的な健康診断を受けて、進行する前に対処することが重要となります。また、症状としては出にくいですが、日常的に愛犬の様子を確認し、状態の変化にも気を配ることが大切になります。

何かご不明な点がありましたら、お気軽に当院までお問い合わせください。

Q&A

 

Q. 胆嚢粘液嚢腫になるとどんな症状が出ますか?

A. 初期は症状が出ないことも多く、状態が進行してから嘔吐や活動性の低下、食欲不振など非特異的な症状が出てくることがあります。

 

Q. 胆嚢粘液嚢腫の原因は何ですか?

A. 明確な原因は明らかにはなっていません。胆汁と一緒に生成されるムチンという物質が多量に産生されることによって胆嚢粘液嚢腫に至るとされています。

 

Q. 予防は出来ますか?

A. 定期的な健診で状態を把握すること、状態が進行しないように内科治療を実施することで進行を抑制できる場合があります。

 

Q. 手術は必要ですか?

A. “胆嚢破裂”や”胆嚢粘液嚢腫を原因とする肝外胆管閉塞”がある場合には早急な手術が必要になる場合があります。状態によって早急に手術が必要かどうかも変わりますので、まずはご相談下さい。

 

Q. そちらで手術はできますか?

A. はい、手術は可能となっております。胆嚢粘液嚢腫でお困りの場合はお気軽にお問い合わせください。

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