眼球メラノサイトーマに対して眼球摘出を実施した犬の1症例
最近眼が充血している、眼脂が出てくるなどの症状はありませんか?もしかしたら、目の腫瘍が隠れている可能性もあります。
眼球や眼球内にできる腫瘍は確認がしづらく、見つけた場合にはすでに大きくなっていることがあります。また、見た目では良性と悪性の区別が難しく、根治を目的とする場合は外科手術が必要となります。
今回は眼球に腫瘍ができてしまった犬の症例をご紹介します。

📌目次


症例情報
症例は9歳3カ月のラブラドール・レトリーバーの男の子です。以前から眼に腫瘍は認められていましたが、腫瘍自体も大きくなり、QOLを上げる目的で眼球摘出を実施することとなりました。


検査結果
超音波検査にて眼内を観察しましたが、眼球内は腫瘍により構造が異常になっているのが認められました。


実際の手術写真
ここからは実際の手術写真を用いて手術内容を簡潔に載せていきます。
出血なども認められるため、血が苦手な方はご遠慮下さい。
苦手な方はこちらから結果のページまで飛べます⇨こちら(病理組織学的検査の結果まで飛びます)



病理組織学的検査結果
病理組織学的検査の結果では、眼球メラノサイトーマと診断されました。メラノサイトーマはメラニン色素産生細胞(メラノサイト)由来の良性腫瘍とされています。大部分のメラノサイトーマは緩徐に成長することが多いですが、悪性転化を起こしたり、転移を起こすこともあるため注意が必要となります。


まとめ
この症例は糖尿病も併発していたため、術後に創部の感染を起こしたりしましたが、現在も良好な経過を辿っています。眼球には、悪性の腫瘍もできることもあるため注意が必要です。また、腫瘍には予防法はないため、早期発見・早期治療が最も大切になります。
何か眼がおかしいなと思った場合はお近くの動物病院をすぐ受診するようにしましょう。

Q&A
Q. 眼の腫瘍が出来たら治りますか?
A. 良性のものであれば、適切な時期での外科手術により根治が可能となります。悪性腫瘍の場合は根治が難しく、術後も化学療法などが必要なことがあります。
Q. 治療法にはどのようなものがありますか?
A. 腫瘍に対する治療としては、根治を目的とする場合には外科手術が、状況によっては化学療法が選択される場合があります。
Q. 治療をしなかった場合はどうなりますか?
A. 腫瘍が増大することにより、眼が閉じれなくなってしまったり、腫瘍による圧迫により、眼圧が上昇したり痛みや不快感を伴うことがあります。
Q. 治療したら再発しませんか?
A. 完全切除ができていれば再発の可能性は低いですが、不完全な場合は再発の可能性があります。
Q. 治療すると見た目は変わりますか?
A. 眼球摘出後は、眼を閉じたような見た目に変化します。多くの子は術後も気にすることはなく通常通り生活できる子がほとんどです。
その他の記事
-
高悪性度消化器型リンパ腫を外科摘出後、抗がん剤を行なった猫
消化器型リンパ腫は猫のリンパ腫のうち最も多くの割合を占めるものであるのと同時に、猫の消化管において最も発生率の高い腫瘍としても知られています。 症例 猫 雑…
2年前 -
胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …
4年前
-
犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは? | 実際の手術写真を使って解説
瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…
1年前 -
そのガーガー音 “気管虚脱” かもしれません
呼吸をするときに " ガーガー " とガチョウが鳴くような異常な呼吸音がする時はありませんか?その異常な呼吸はもしかしたら気管虚脱かもしれません。気管虚脱は特に小型犬に多…
2か月前 -
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
2年前 -
犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…
12か月前 -
猫の尿管結石の症例
猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…
4年前 -
犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません!
最近 "おしっこの量が増えた" や "体重が減ってきた" などが認められることはありませんか? もしかしたら、それは慢性腎臓病の初期症状かもしれません。 慢性…
10か月前 -
肝中央区域の腫瘍および胆嚢を一括切除した犬の一例
近年では、獣医療の発達とともに犬猫の長寿化が認められるようになり、腫瘍と診断される子も増えてきています。腫瘍の中でも肝臓腫瘍は稀であり、肝臓自体は”沈黙の臓器”とも呼ばれ…
5か月前 -
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
2年前
