ご予約はこちら
受診ご希望、獣医師の方 045-932-5151
企業、法人の方 090-6770-5244
2026年6月16日

肝中央区域の腫瘍および胆嚢を一括切除した犬の一例

近年では、獣医療の発達とともに犬猫の長寿化が認められるようになり、腫瘍と診断される子も増えてきています。腫瘍の中でも肝臓腫瘍は稀であり、肝臓自体は”沈黙の臓器”とも呼ばれ、腫瘍が発生しても症状が出にくいことが多く、発見された際には大きくなっていることもあります。

今回は肝臓の中央区域に腫瘍ができた犬の症例についてご紹介していきます。

📌目次

症例情報

症例は13歳4カ月のトイ・プードルの避妊済みの女の子です。

肝臓腫瘍の手術の目的で受診しました。

症例情報

検査

CT検査では、内側左葉および方形葉に動脈相で不均一に造影増強される4.0×4.6×3.5cmの腫瘤性病変が認められました。

腫瘤が大きいため、減容積の目的で外科手術を実施することとなりました。

CT検査結果

実際の手術写真

ここからは実際の手術写真を用いて手術内容を簡潔に載せていきます。

出血なども認められるため、血が苦手な方はご遠慮下さい。

苦手な方はこちらから結果のページまで飛べます⇨こちら

肝臓腫瘍および胆嚢一括摘出-1
肝臓腫瘍および胆嚢一括摘出-2
肝臓腫瘍および胆嚢一括摘出-3
創部
摘出組織

病理組織学的検査

病理組織学的検査の結果は、肝細胞腺腫および結節性過形成と診断されました。

犬の原発性肝臓腫瘍の発生は稀であり、犬の全腫瘍の1.5%未満とされています。結節性過形成を含む肝細胞増殖性疾患は原発性腫瘍の80-90%程度を占め、肝細胞腺腫は悪性腫瘍である肝細胞癌よりも発生が多いとされています。しかし、肝細胞癌と肝細胞腺腫は2つは明確には区別できない場合もあるため注意が必要です。

病理組織学的検査結果

まとめ

術後3カ月が経過しましたが、この症例は現在も元気過ごしています。

肝臓は上記でも述べたように、”沈黙の臓器”と呼ばれ、病気が進行するまで症状が出にくく、早期発見が遅れることもあります。そのため、早期発見・早期治療のためにも、定期的な健康診断を行うことが重要となります。

いつもと様子が違うなど、気になることがあれば早めにお近くの動物病院にかかるようにしてください。

※他の腫瘍疾患について⇨こちら

Q&A

Q. 高齢でも手術は可能ですか?

A. 高齢でも手術は可能です。手術前に全身的な検査をさせていただき、麻酔リスクの判定をさせていただきます。麻酔リスクが低い場合には高齢でも安全に手術が可能となる場合があります。

 

Q. 手術以外の治療方法はありますか?

A. 単発性の腫瘍であれば、外科手術による摘出が最も一般的になります。外科手術による摘出が困難な場合は、放射線治療や肝動注治療(カテーテル療法)も選択肢となります。しかし、手術ほどの確実性はなく、実施出来る施設が限られます。

 

Q. 肝臓腫瘍ではどのような症状が出ますか?

A. 初期の段階では症状として出ることはほとんどありません。そのため、腫瘍が大きくなってきたなどの病態が進行した場合に症状として出てくることがあるため注意が必要です。

 

Q. 治療したらどれくらい生きられますか?

A. 完全切除ができた場合の生存期間中央値は4年以上(4年生存率は約90%)とされています。切除の完全性によって差が出てしまう可能性はありますが、不完全切除であっても、生存期間中央値は2年以上という報告もあり、生存期間を延長できる可能性があります。

その他の記事

  • 腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術

     潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…

    2年前
  • 先天性門脈体循環シャント

     先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…

    3年前
  • 犬の外傷性股関節脱臼

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…

    2年前
  • 犬の脾臓腫瘍

    犬の脾臓腫瘍は中・高齢で好発し、1/3~1/2が悪性とされています。腫瘍破裂や出血により劇症を呈することもあれば、症状が認められない場合も少なくありません。今回紹介…

    3年前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    3年前
  • 酸素中毒とは? | 酸素濃度は高ければいいわけではない!気を付けたい酸素中毒について

    皆さんは "酸素中毒" というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒があ…

    4年前
  • 犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~

    こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…

    11か月前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    2年前
  • 猫の難病、猫伝染性腹膜炎(FIP)について解説

    猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫、特に子猫にとって命に関わる程の恐ろしい病気になります。猫伝染性腹膜炎はかつては”治らない病気”とされ、一度発症すると有効な治療法がなく、ほ…

    3か月前
  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    7年前