ご予約はこちら
受診ご希望、獣医師の方 045-932-5151
企業、法人の方 090-6770-5244
2026年8月26日

腹腔鏡下にてシャント血管結紮術を実施した犬の1例

先天性門脈体循環シャントとは、主に若齢の犬や猫で稀に認められる病気です。名前の通り先天的(生まれつき)な病気で、肝臓に流入する血管(門脈)と全身循環(静脈)の間に異常な血管を形成する病気になります。この病気は特異的な臨床症状を示さないこともあり、詳しい検査をしないと見つからないことも多く認められます。

今回はこの先天性門脈体循環シャントと診断された症例についてご紹介します。

📌目次

症例情報

症例は10カ月齢のジャックラッセル・テリアの男の子です。他院にて先天性門脈体循環シャントが疑われたため、精査および治療の目的で本院を受診しました。

検査結果

他院の検査では、肝酵素の軽度上昇が認められたため、肝機能検査を外注したところ、重度の肝機能の低下が認められていました。そのため、先天性門脈体循環シャントを疑い精査を実施しました。

 

CT検査の結果では、後大静脈ー左胃静脈、右胃静脈シャントと診断されました。

実際の手術写真

ここからは実際の手術写真を用いて手術内容を簡潔に載せていきます。

出血なども認められるため、血が苦手な方はご遠慮下さい。

苦手な方はこちらから結果のページまで飛べます⇨こちら(病理組織学的検査の結果まで飛びます)

トロッカーを設置し、腹腔鏡を用いて腹腔内を探索、シャント血管の位置を確認しています。

 

シャント血管周囲の組織を剥離し、シャント血管を仮結紮。門脈圧を測定し全身の血圧も安定していることを確認、また造影検査にてシャント血管が結紮できていることを確認しました。

 

シャント血管を完全結紮後、再度造影にてシャント血管が縛れていることを確認。同時に肝生検を実施し、閉創し手術を終了としました。

病理組織学的検査

肝生検の病理組織学的検査では、血管異常(門脈体循環シャント)との結果でした。

まとめ

本症例は術後72時間も術後発作も認められず、その後も良好な経過を辿っています。

門脈体循環シャントは外科手術が成功すれば、症状もなく、普通の犬ちゃんと同じように長生きすることが可能となります。

今回の手術では、お腹を大きく開ける開腹手術ではなく、腹腔鏡を用いた低侵襲な手術にて実施しています。門脈体循環シャントをご検討されている場合は当院へご相談下さい。

 

先天性門脈体循環シャントについて⇨こちら

開腹手術の症例について⇨こちら

Q&A

Q. どのような症状が見られますか?

A. 体が小さいなどの発育不良、嘔吐下痢などの消化器症状、発作などの神経症状が見られることがあります。

Q. どのように見つけますか?

A. 血液検査、レントゲン検査、超音波検査、CT検査などの検査を用いて診断します。確定診断には造影のCT検査が必要となります。

Q. どのような治療法がありますか?

A. 根治には基本的に外科治療が第一選択となります。しかし、外科手術が適応とならない場合には緩和療法として内科治療を実施する場合もあります。

Q. 予後はどれくらいになりますか?

A. 外科手術で根治が見込める場合には比較的予後は良好で、普通の子と同じぐらい長生きすることが出来ます。

その他の記事

  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …

    8か月前
  • 犬・猫の避妊・去勢手術におけるメリット・デメリット

    新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…

    3年前
  • 腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術

     潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…

    2年前
  • 右骨盤部分切除および断脚を実施した犬の1例を紹介します

    四肢(足)に発生する腫瘍は悪性のものが多く、大型犬の中高齢で特に多く見られ、急速に進行していくのが特徴です。症状としては足の腫れや跛行(びっこ)が主な症状になります。 …

    3か月前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …

    8か月前
  • 犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!?

    最近「お水を飲む量が多い」「おしっこが薄くて多い」「食欲がありすぎる」などの症状が見られることはありませんか? 副腎腫瘍では症状は多岐にわたり、無症状の場合もあり…

    10か月前
  • アレルギー食|たくさんありすぎてどれを選んでいいか分からない?種類と使い分けについて

    ペットショップや薬局のペットフードコーナーで「アレルギー体質の子向け」と書かれたフードを見かけたり、獣医さんから「アレルギーかも」と言われたことはありますか? アレル…

    1年前
  • ”麻酔前検査”をお勧めしています

    手術をするにあたって、人の場合と同様に犬ちゃん猫ちゃんにも全身麻酔をかける必要があります。麻酔前検査では、この全身麻酔が安全にかけられるかどうかを評価するための検査となり…

    3年前
  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    4年前
  • セカンドオピニオン

    セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…

    3年前