ご予約はこちら
045-932-5151
  • ホーム
  • 症例
  • 外科手術
  • 若い子に稀に見られる先天性門脈体循環シャントとは? │ 早期発見や実際の治療法について
2025年9月9日

若い子に稀に見られる先天性門脈体循環シャントとは? │ 早期発見や実際の治療法について

先天性門脈体循環シャントは主に若齢の犬ちゃんや猫ちゃんで稀に認められる病気です。

この疾患は特異的な臨床症状を示さないこともあり、詳しい検査をしないと見つからないことが多いです。

 

今回の記事では、犬や猫の先天性門脈体循環シャントについて詳しく解説します。

特に若齢の新しいご家族を迎えた飼い主様は、ぜひ最後までお読みください。

 

 

📌目次

 

 

 

先天性門脈体循環シャントとは…?

 

先天性門脈体循環シャントとは、胎児の時の血管がうまく閉鎖しなかったことにより、二次的に発生する血管異常のことで、生まれつき血管に異常のある病気になります。

本来であれば、腸(消化管)から吸収された栄養や毒素は門脈という血管を経て肝臓に移動します。しかし、門脈体循環シャントの子では、門脈の途中で枝分かれした血管(シャント血管)ができてしまい、他の血管に栄養や毒素が流れ込んでしまい、これにより症状を引き起こしてしまいます。

無治療の場合では健康な子と比べて寿命が短くなってしまいますが、先天性門脈体循環シャントは外科治療で完治することが多く、完治した場合には健康な子と同様の生活をすることが可能となります。

先天性門脈体循環シャントの模式図

 

 

よく見られる症状は?

 

シャント血管があると、以下のことにより、様々な症状が出る可能性があります。

①肝臓に栄養を送る血液が少なくなる

②肝臓で解毒されるはずの血液が解毒されずに全身に回る

  

軽度であれば症状はほとんど出ませんが、重度なものや肝機能低下が著しい場合には、以下のような症状が出る恐れがあります。

● 神経症状・・・ぐるぐる回る、壁に顔を押し当てる、発作など。

● 発育不良・・・肝臓に栄養が行かなくなることで成長が妨げられます。

● 尿路結石・・・肝臓で解毒されるはずの「アンモニア」が溜まることで、これを主体とした結石ができやすくなります。

● 嘔吐下痢などの消化器症状

 

 

必要な検査および診断は?

症状が出る前に発見されることが多く、例えば避妊去勢手術をする前の手術前検査や、健康診断の血液検査・レントゲン検査などをきっかけに偶発的に見つかることがあります。

血液検査

 

この疾患では、様々な異常が認められます。

肝酵素(肝障害の指標)の上昇

尿素窒素(アンモニアを解毒した老廃物)の低下

アルブミン(タンパク質)の低下

コレステロール(脂質)の低下

グルコース(血糖値)の低下

アンモニア(肝臓で解毒される成分)の上昇

総胆汁酸(肝臓で再利用される消化酵素)の上昇

血液凝固異常(止血異常)            など

 

肝臓には生命維持のために重要な役割がたくさんあります。先天性門脈体循環シャントの子では、門脈から肝臓への血流が少なくなるので、肝臓が本来の機能を果たすことが出来なくなります。そのため、有毒なアンモニアの回収と分解、タンパク質の産生、脂質や糖分の貯蔵、総胆汁酸の再利用、血液凝固因子の産生などの肝機能が低下することで、上記のような様々な異常が認められます。
このような異常値が認められた場合、門脈体循環シャントが本当に疑わしいのか確認するために食事負荷試験」という検査を実施します。この検査では、食後90分のアンモニア総胆汁酸を測定し、絶食時よりも高くなっていないかを調べる検査になります。
食事をすると消化管に胆汁酸が分泌され、本来であれば食事から吸収されたアンモニア胆汁酸は、消化管➡門脈➡肝臓という流れで肝臓に回収されます。しかし、シャント血管が存在すると、食事から吸収されたアンモニアや消化のために分泌された胆汁酸は肝臓を通らず、シャント血管を介して全身に流れてしまうため、これら2つの項目が異常な高値を示します。

 

レントゲン検査

シャント血管がある子では、門脈から肝臓へ流れる血流が少なくなることで肝臓がうまく育たなくなり、肝臓のサイズが小さくなっていることが一般的です。レントゲンを撮影することで肝臓の大きさを判断します。

 

超音波検査

肝臓内の門脈が細くなり、肝臓は小さくなっていることがあります。シャント血管が発達している場合は超音波検査にてシャント血管が発見されることもあります。また、アンモニアの血中濃度が高くなることで、膀胱内に尿酸アンモニウムという結石が出来ていることもしばしばあります。

 

超音波でのシャント血管の見え方
拡張した右胃静脈
先天性門脈体循環シャントによる合併症(膀胱結石)
膀胱結石

 

CT検査

血液検査、レントゲン検査、超音波検査は基本的にはいずれも暫定診断です。これらの検査で門脈体循環シャントが疑わしい場合、確定診断のために造影CT検査を行います。造影にて門脈から余分な血管が分岐していれば門脈体循環シャントと診断されます。

 

先天性門脈体循環シャントのCT画像

 

 

治療法は?

 

根本治療は外科治療であり、内科治療は緩和目的で実施されています。

外科治療

CT検査の結果に基づき、シャント血管のタイプや形態を把握します。その後、手術を行いシャント血管を完全または部分閉塞します。(門脈圧や消化管の色調、血圧や心拍数などから、どちらにするかを決定します。)閉塞方法は様々で、以下の方法を状態に応じて使い分けます。

縫合糸による結紮

非吸収糸を用いてシャント血管を結紮します。結び方によっては完全結紮と部分結紮を変えることが出来ます。

 

アメロイドコンストラクター設置

ドーナツ状の血管閉塞具。血管に装着することで水分を徐々に吸収し、中心の穴が狭くなっていき、緩やかに血管を閉塞させます。

 

セロファンバンディング

セロハンを血管周囲に巻き付け、炎症反応や線維化を起こすことにより血管を徐々に閉塞させます。

 

コイル塞栓術

血管内にカテーテルを挿入しコイルを血管内に詰めて血流を遮断します。開腹を行う必要がなく、侵襲性が低い手術法ですが、コイルが流れて他の血管に詰まるリスクがあります。

実際のシャント血管の結紮術の様子
コイル塞栓術に使うコイル

※術後、結紮後発作症候群術後72時間以内犬で5-18%猫で8-22%の発症率が報告されています)や門脈圧亢進症がみられることがあり経過には注意が必要です。

 

 

内科治療

肝性脳症を呈している動物や、完全結紮が出来なかった動物などの維持療法として実施されます。

食事療法

蛋白質や必須脂肪酸などを調整した肝臓用療法食を与えます。

 

サプリメント

アミノ酸やビタミンなどを含んだサプリメントは肝臓の健康を維持します。

 

ラクツロース抗菌薬

消化管からのアンモニアの吸収を抑制します。ただし、抗菌薬は耐性菌を生じる可能性があり使用には注意が必要です。

 

抗痙攣薬

肝性脳症に起因した発作が生じた場合には抗痙攣薬を使用することがあります。

 

⑤ その他臨床兆候に応じた治療

臨床兆候に応じて点滴制吐薬粘膜保護薬抗血栓薬などを使用します。

    肝臓サポート
     Vercure Liv

 

 

 

まとめ

 

先天性門脈体循環シャントは稀な疾患ではありますが、若齢時の検査によって見つかる可能性のある疾患です。早期発見のためには、小さい時からでもきちんと検査をしておくことが大切になります。

また、定期的な健康チェックも早期発見には重要になってきます。

当院では先天性門脈体循環シャントの外科手術も実施しておりますので、ご家族が罹患している際はお気軽にご相談下さい。

 

実際の手術症例についてはこちらから

 

 

Q. 先天性門脈体循環シャントのCT検査は実施していますか?

A. はい。当院ではCT検査を実施可能です。

 

Q. 先天性門脈体循環シャントの外科手術は対応していますか?

A. はい。当院では先天性門脈体循環シャントの外科手術にも対応しています。

その他の記事

  • 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは?

    瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…

    8か月前
  • 当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します

     皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。  当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…

    3年前
  • 2022年の健康診断のまとめ

    季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…

    3年前
  • 最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜

    はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…

    1か月前
  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    6年前
  • 総合診療科

    例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…

    2年前
  • 紐状異物

    紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…

    3年前
  • 低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)

     膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…

    3年前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    2年前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~検査および診断編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症における検査および診断について解説していきます。 甲状腺機能低下症では、様々な検査が検査が併用される場合があります。 甲状腺機…

    2週間前