酸素中毒とは? | 酸素濃度は高ければいいわけではない!気を付けたい酸素中毒について
皆さんは “酸素中毒” というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒があります。
ここではこの “酸素中毒” について解説していきたいと思います。
酸素中毒とは…?
空気中には酸素が約21%含まれており、酸素が呼吸によって体に取り込まれると、その一部は活性酸素という物質に変化します。これは有害なものですが、私たちの体には活性酸素から身を守るための防御能力がちゃんと備わっていますので、普段生活する分には何の問題もありません。しかし私たちの防御能力を超えた量の活性酸素が産生されてしまうと、神経や肺を障害したり、遺伝子に傷をつけて癌の原因になってしまうことがあります。これを “酸素中毒” と呼びます。
麻酔における酸素濃度について
獣医療においては、手術の際、麻酔により呼吸が抑制されてしまうため、酸欠にならないように高濃度の酸素を嗅がせます。しかし長時間高濃度の酸素を吸い続けると、必然的に活性酸素の量も増えて体の防御能力を超えてしまい、 “酸素中毒” になってしまいます。また、空気の中には酸素以外に窒素という物質が含まれていますが、これは肺(肺胞)を膨らませる役割を担っています。100%酸素のみを吸っていると、この中に窒素は含まれないので徐々に肺が膨らまなくなり、呼吸ができなくなってしまいます。
酸素濃度はどれくらいが良いのか?
それでは酸素濃度は何%であれば安全なのか、ですが、60%以下であれば長時間の酸素吸入でも安全とされています。

当院のエアーコンプレッサ。酸素と空気を混ぜることで、酸素濃度を自由に調節することができます。
まとめ
当院では酸素濃度の調節が可能な設備を備えており、避妊・去勢手術だけでなく、短頭種さん(パグやフレンチブルドッグ等)や呼吸器に問題がある子の手術でも、酸素中毒などの呼吸器トラブルのリスクを最小限に手術を行うことができるのでご安心ください。
⇨当院の麻酔科についてはこちらから
その他の記事
-
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
3年前 -
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…
6年前
-
甲状腺腺腫および肺腺癌に対して外科的介入を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説
” 最近食欲はあるのに体重は減ってきている ” ” 落ち着きがなくなり、攻撃的になったり、夜中に鳴くようになった ” このような症状が認められることはありま…
1か月前 -
犬の乳腺腫瘍
犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速…
3年前 -
犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…
1年前 -
新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定
獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…
1年前 -
犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません! ~治療編~
こちらの記事では慢性腎臓病(CKD)の治療法について解説していきます。 今までの記事でも解説した通り、慢性腎臓病の治療法はステージによって治療も異なります。 …
1か月前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも?
" 最近元気がない " や " 皮膚症状が出てくるようになった " といった症状が見られることはありませんか?もしかしたら、甲状腺機能低下症の初期症状かもしれません。 …
3か月前 -
消化管穿孔
消化管穿孔は外傷、異物、腫瘍など様々理由で生じます。今回は消化管の穿孔により細菌性腹膜炎を生じた猫を紹介いたします。 雑種猫 2歳9カ月 去勢雄 数日前から食欲…
3年前 -
肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…
6年前
