- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 犬の椎間板ヘルニア
犬の椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫することで痛みや麻痺などの症状を引き起こします。
ミニチュア・ダックスフントやコーギーなどの犬種では椎間板の変性が起きやすいため、椎間板ヘルニアの発症が多いとされています。最近ではフレンチ・ブルドッグの症例も増えています。
椎間板ヘルニアはハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分けられ、ハンセンⅠ型は急性発症が多く、ハンセンⅡ型では数週間から数カ月かけて徐々に進行することが多いとされています。


臨床徴候や身体検査などで椎間板ヘルニアを疑うことはできますが、確定診断には脊髄造影検査やCT・MRI検査等が必要になります。
治療法は重症度(グレード)と臨床経過によって異なりますが、一般的に臨床徴候が軽度な胸腰部のグレード1や2、頚部のグレード1などでは内科治療による保存療法を実施することが多いです。

内科治療としては自宅もしくは入院下で安静に過ごしていただくケージレストや痛みや炎症を抑える目的で「Nsaids」や「ステロイド」の薬を使います。また、痛みがひどい場合には神経疼痛に効果があるとされている「ガバペンチン」などの鎮痛薬を併用することもあります。その他には温熱療法やサプリメントなども選択肢に入ります。
外科治療としては椎骨に穴をあけて神経の圧迫を取り除いてあげる片側椎弓切除やレーザーで椎間板を蒸散させる経皮的椎間板レーザー減圧術(PLDD)などが挙げられます。





実際の手術の様子
当院での治療の流れとしては、臨床徴候からヘルニアが疑わしい場合はグレードが軽ければ内科治療で経過をみていきます。内科治療への反応が乏しく、痛みや麻痺が続く場合やグレードが重い場合はCT・MRI検査に進み、確定診断の後に外科手術を実施しています。手術後にはリハビリをすることで足の機能がしっかり戻る子が多いです。また、重度の麻痺で足の動きがなかなか戻らない症例でも、再生医療(脂肪肝細胞の投与)を併用することもできますので、お困りの方はお問い合わせください。
その他の記事
-
「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!
こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…
3か月前 -
尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌)
犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…
12か月前
-
紐状異物
紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…
2年前 -
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
12か月前 -
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
10か月前 -
犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫
犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半…
1年前 -
肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…
5年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前 -
肥満細胞腫
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…
3年前 -
尿石症
尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…
5年前