- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)
犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)
瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあります。この瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺で、涙の約30-60%程度を分泌しています。

”伴侶動物の眼科診療” より
瞬膜腺脱出とは、この瞬膜腺が正常な位置から逸脱し、瞬膜と角膜の間に露出している状態で、飛び出した組織が赤く腫れあがっている様子が ”さくらんぼ” に似ていることから ”チェリーアイ” とも呼ばれています。脱出することにより角膜などにも障害が出てくる恐れがあります。
原因についてははっきりとは分かっていませんが、瞬膜と眼窩骨周辺組織間の結合組織の脆弱化や環境アレルゲンへの暴露、遺伝的要因などが関係しているとされています。
好発犬種はアメリカン・コッカー・スパニエル、ペキニーズ、短頭種などが報告され、2歳齢までの若齢動物で起こりやすいとされています。
瞬膜腺は露出が持続することで、結膜炎や涙液量減少が起こる場合があるため、放っておくと乾性角結膜炎(KCS)の発症率が上がってきてしまいます。そのため、基本的には外科的整復が必要となってきます。
外科的整復については
◇ポケット法
◇アンカー法
の主に2つの手技があります。

”犬の治療ガイド2020 私はこうしている” より
今回はポケット法にて瞬膜腺脱出を整復した症例をご紹介します。
症例情報
5歳10ヵ月のミニチュア・ダックスフントの女の子。過去にも瞬膜腺脱出はありましたが、その時は自然に戻ってくれたとのことです。しかし、再度脱出してしまったため手術を実施することになりました。

手術
ここからは実際の手術写真とともに整復法を簡潔に紹介します。




術後


術後1週間 術後3週間
術後の顔貌になります。まだ少し充血は残っていますが、瞬膜腺は収まり、涙もきちんと出ています。一定期間は点眼薬を注しながら充血を抑えていきます。
瞬膜腺脱出では外科的整復をした場合でも、再発する可能性があるため注意して経過を見ていきます。
※他眼科疾患についてはこちら
その他の記事
-
皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…
2年前 -
猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…
3年前
-
泌尿器科
泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。 高齢になると腎臓…
2年前 -
「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!
こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…
3週間前 -
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
8か月前 -
消化管穿孔
消化管穿孔は外傷、異物、腫瘍など様々理由で生じます。今回は消化管の穿孔により細菌性腹膜炎を生じた猫を紹介いたします。 雑種猫 2歳9カ月 去勢雄 数日前から食欲…
2年前 -
肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…
5年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
2年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前 -
猫の会陰尿道造瘻術
尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。 …
2年前