- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 発作重責・脳炎
2019年11月26日
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終的に死に至ります。確定診断にはCTやMRIなどの高度横断面像検査が必要です。
(小動物の神経疾患救急治療 339-358p 2018.12 インターズー より抜粋)
症例
チワワ 10歳 未去勢雄
主訴:てんかん発作
発作重責状態で来院。酸素室内にて24時間管理を行いました。ジアゼパムやミダゾラム、レベチラセタムやゾニサミドなどの抗てんかん治療駆使し治療を行い、発作は抑制。無事に退院としました。しかし退院後も定期的な発作症状が認められたため、画像診断センターにてMRIを実施しました。
診断結果は『壊死性白質脳炎』。ステロイド治療と免疫抑制剤の併用を試み、一時よりは安定しましたが。徐々に発作頻度が増え、旋回運動や多動も改善が認められませんでした。そこで、現在では治療法を一変させ抗がん剤治療を取り入れたところ、発作頻度は減少、多動や旋回運動も抑制され一部症状改善が認められました。
今回の症例では、抗てんかん治療への反応が乏しかったため、MRIを撮影しました。その上で現行の治療では改善が乏しかったため最新の治療を組み込み、症状の改善に努めたことで著しいQOLの増加を認めた症例です。脳炎自体は完治する疾患ではありません。しかし、QOLの改善のためにはしっかりと病態をコントロールしてあげることが必須になります。
当院にはCTやMRIはありませんが、他の施設で撮影と読影まで行ってもらい、最終的な治療の判断やその後の経過は当院にて最後まで責任を持って診させていただいております。
その他の記事
-
尿管結石摘出術
尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…
2年前 -
皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…
2年前
-
肋間開胸術による犬の肺腫瘍切除
今回は他院にてレントゲン撮影をした際に肺腫瘍が見つかり、セカンドオピニオンとして当院を受診し、CT検査及び肺葉切除によって腫瘍を摘出した一例を紹介します。 a …
10か月前 -
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
1年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
2年前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
2年前 -
「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!
こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…
5か月前 -
食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例
食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…
8か月前 -
犬・猫の去勢手術
【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…
2年前 -
犬の脱毛|加齢によるもの?病気?
わんちゃんも人と同じように、高齢になると毛の色が変化したり薄くなったりします。これは生理的なものですが、中には病的に脱毛が起こってしまうことがあります。 今回は病的な…
5か月前