ご予約はこちら
受診ご希望、獣医師の方 045-932-5151
企業、法人の方 090-6770-5244
2023年7月8日

膝蓋骨脱臼の整復

 膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床徴候としては片足をあげたまま歩いたり、スキップをしたりします。小型犬が多い都市部の動物病院では5頭に1頭がこの病気に罹患しているとの統計もあります。先天性、発育期性、外傷性に分けられますが、多くが成長期に発症する発育期性です。

 触診により脱臼のグレードを4段階に分類することができます。

G1:膝を伸ばした状態で用手的に膝蓋骨を脱臼させることが出来る

G2:自然に脱臼が生じる

G3:膝蓋骨は常に脱臼した状態だが、用手的に整復が可能

G4:膝蓋骨が常に脱臼している状態で、用手的に整復が困難

 一般的にG1やG2の軽度の膝蓋骨脱臼で臨床徴候がないものに関しては、経過観察や保存療法が選択されることが多く、日常生活には影響が出ないことが多いです。G3以上の重度の膝蓋骨脱臼が生じている症例では骨の変形や軟骨の摩耗が起こり、関節炎や前十字靭帯断裂の発症リスクが高くなることが知られています。

右後肢の膝蓋骨(黄色丸)は大腿骨の滑車溝から内方に変位している。反対側の膝蓋骨は滑車内に納まっている。

 当院では頻繁に足を挙げたりする臨床徴候のある膝蓋骨脱臼やG3以上の膝蓋骨脱臼に関しては整復手術を提案しています。

 膝蓋骨脱臼が生じる詳細なメカニズムはわかっていないですが、要因として「大腿四頭筋の不均衡」「内外側支帯の不均衡」「脛骨粗面の位置異常」「大腿骨滑車の形成異常」が挙げられます。手術ではこれらの異常を矯正し、全体のバランスを整えることで膝蓋骨の脱臼を防ぎます。

 すべての症例で手術が適応になるわけではないですが、外傷性に膝蓋骨脱臼が生じてしまった子や臨床徴候がひどい子では手術により後肢の動きが改善する子がほとんどです。よく後ろ足を挙げてしまったり、急にキャンと鳴いて動かなくなったりしている場合は膝蓋骨脱臼が影響しているかもしれません。膝蓋骨脱臼の診断には特に大きな検査は必要ありませんので、心当たりのある方はまずは病院を受診してみてください。

その他の記事

  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    7年前
  • 犬と猫の高カルシウム血症について

    普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…

    3年前
  • 猫の子宮蓄膿症は若い子でも発症する?原因と治療について。

    「子宮蓄膿症」とは、避妊手術をしていない女の子の犬/猫ちゃんの子宮に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。 今回は猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。 …

    2年前
  • 消化管穿孔

    消化管穿孔は外傷、異物、腫瘍など様々理由で生じます。今回は消化管の穿孔により細菌性腹膜炎を生じた猫を紹介いたします。 雑種猫 2歳9カ月 去勢雄 数日前から食欲…

    3年前
  • 猫の難病、猫伝染性腹膜炎(FIP)について解説

    猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫、特に子猫にとって命に関わる程の恐ろしい病気になります。猫伝染性腹膜炎はかつては”治らない病気”とされ、一度発症すると有効な治療法がなく、ほ…

    4か月前
  • 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは? | 実際の手術写真を使って解説

    瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…

    1年前
  • 猫の尿管結石の症例

    猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…

    4年前
  • 糖尿病性ケトアシドーシス

    糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…

    7年前
  • 総合診療科

    例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…

    3年前
  • 先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復

    腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…

    1年前