- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 膝蓋骨脱臼の整復
膝蓋骨脱臼の整復
膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床徴候としては片足をあげたまま歩いたり、スキップをしたりします。小型犬が多い都市部の動物病院では5頭に1頭がこの病気に罹患しているとの統計もあります。先天性、発育期性、外傷性に分けられますが、多くが成長期に発症する発育期性です。
触診により脱臼のグレードを4段階に分類することができます。
G1:膝を伸ばした状態で用手的に膝蓋骨を脱臼させることが出来る
G2:自然に脱臼が生じる
G3:膝蓋骨は常に脱臼した状態だが、用手的に整復が可能
G4:膝蓋骨が常に脱臼している状態で、用手的に整復が困難
一般的にG1やG2の軽度の膝蓋骨脱臼で臨床徴候がないものに関しては、経過観察や保存療法が選択されることが多く、日常生活には影響が出ないことが多いです。G3以上の重度の膝蓋骨脱臼が生じている症例では骨の変形や軟骨の摩耗が起こり、関節炎や前十字靭帯断裂の発症リスクが高くなることが知られています。

右後肢の膝蓋骨(黄色丸)は大腿骨の滑車溝から内方に変位している。反対側の膝蓋骨は滑車内に納まっている。
当院では頻繁に足を挙げたりする臨床徴候のある膝蓋骨脱臼やG3以上の膝蓋骨脱臼に関しては整復手術を提案しています。
膝蓋骨脱臼が生じる詳細なメカニズムはわかっていないですが、要因として「大腿四頭筋の不均衡」「内外側支帯の不均衡」「脛骨粗面の位置異常」「大腿骨滑車の形成異常」が挙げられます。手術ではこれらの異常を矯正し、全体のバランスを整えることで膝蓋骨の脱臼を防ぎます。





すべての症例で手術が適応になるわけではないですが、外傷性に膝蓋骨脱臼が生じてしまった子や臨床徴候がひどい子では手術により後肢の動きが改善する子がほとんどです。よく後ろ足を挙げてしまったり、急にキャンと鳴いて動かなくなったりしている場合は膝蓋骨脱臼が影響しているかもしれません。膝蓋骨脱臼の診断には特に大きな検査は必要ありませんので、心当たりのある方はまずは病院を受診してみてください。
その他の記事
-
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
7年前 -
尿石症
尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…
6年前
-
胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …
3年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…
7か月前 -
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~治療編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症例で必要な治療について解説していきます。 副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、生涯にわたる投薬が必要になりますが…
8か月前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
3年前 -
内視鏡 異物除去
内視鏡症例をご紹介いたします。 果物の種を飲み込んでしまったワンちゃんで内視鏡によって摘出を行いました。 異物、誤食の中で桃の種など果物の種は高確率に腸…
6年前 -
甲状腺腺腫および肺腺癌に対して外科的介入を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説
” 最近食欲はあるのに体重は減ってきている ” ” 落ち着きがなくなり、攻撃的になったり、夜中に鳴くようになった ” このような症状が認められることはありま…
5か月前 -
アレルギー食|たくさんありすぎてどれを選んでいいか分からない?種類と使い分けについて
ペットショップや薬局のペットフードコーナーで「アレルギー体質の子向け」と書かれたフードを見かけたり、獣医さんから「アレルギーかも」と言われたことはありますか? アレル…
1年前 -
犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは? | 実際の手術写真を使って解説
瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…
1年前
