ご予約はこちら
045-932-5151
2023年7月18日

当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します

 皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。

 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用しており、卵巣だけでなく子宮も摘出します(画像黒線)。卵巣摘出によってホルモン関連性疾患(乳腺腫瘍など)を、子宮摘出によって子宮蓄膿症を予防することができます。

ここからは実際の写真を使って手術の流れをお話ししていきます。

まずは手術直前の様子です。血圧や心拍数、血中の酸素濃度等をしっかりモニタリングしながら手術を行います。

手術直前の様子

バイタルが安定すれば手術開始です。切皮からですが、皮膚や皮下脂肪の中には意外に多くの血管があるので、ガーゼや超音波メスで止血しながら進めていきます。

皮膚・皮下脂肪を切開
筋肉を切開
切開後、腹腔内が見えている

お腹の中の臓器を傷つけないように注意しながら子宮を出してきます。子宮は、膀胱の裏に位置しており、お腹の壁と膜(子宮広間膜と呼ばれる)で繋がっているので、この膜を優しく剥がして子宮をお腹の外に出します。

子宮広間膜を剥がしている
子宮と卵巣が出たところ

子宮の左右には子宮動静脈という太い血管があり、これを傷つけると大量出血の危険がありますので、子宮を切除する前にしっかりと結紮していきます。

子宮動静脈を結紮
左の拡大図(左右2糸ずつ結紮)
子宮を切除

子宮・卵巣を摘出した後、出血がないかもう一度確認して閉腹です。

ここまで、当院の避妊手術の術式についてお話ししました。避妊手術は「予防」に分類されますが、お腹を開ける手術なので、病気の手術と同様に侵襲性は高く慎重な手技が求められます

また、手術と同じくらい大切なのが麻酔管理です。当院ではその子に合わせたオーダーメイドの麻酔を考え、できる限り安全に手術をしていただけます。

去勢・避妊手術を考えられている方は是非お気軽にお問い合わせください。

その他の記事

  • 猫の尿管結石の症例

    猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…

    3年前
  • 両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫

    救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。   症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…

    1年前
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~症状編~

    こちらの記事では副腎皮質機能低下症の症例で認められる症状について解説していきます。 副腎皮質機能低下症では欠乏するホルモンによって見られる症状が異なります。 …

    2週間前
  • 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬

    胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …

    3年前
  • 2025年 春の健康診断の結果をまとめました!

    こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
    今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…

    5か月前
  • 消化器科

    『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…

    2年前
  • 「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!

    こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…

    6か月前
  • 犬の椎間板ヘルニア

     椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫すること…

    2年前
  • 心室中隔欠損症(VSD)

     心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。  全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…

    2年前
  • 先天性門脈体循環シャント

     先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…

    2年前