2024年7月12日
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。
症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。体温40.4℃ 努力性呼吸 SpO2:100% 血圧微弱
Fast:異常なし
T-Fast:心臓周囲に濁りのある胸水(動画)を認めました

胸腔穿刺にて得た液体は濁りのある黄白色を呈しており、性状検査では滲出液で変性した好中球を多数認めました。Grum染色でも明らかな菌体は認められませんでしたが、好気及び嫌気培養検査を外注検査にて提出しました。
全血球計算では変性性左方移動(総WBCの上昇を伴わない桿状核好中球の出現及び好中球の中毒性変化)を認めました。
診断:膿胸(SIRSを伴う)


第2病日の夜には自力摂食が可能になりました。呼吸数、発熱はまだ認められたため胸腔ドレーンを介して生理食塩水で洗浄を行いました。4日目には発熱もおさまり呼吸数も落ち着き、7日目にはドレーンからの廃液も認められなくなりました。廃液量が減るにつれて白血球の左方移動も改善が認められました。白血球の正常化が認められたため胸腔ドレーン抜去を行いました。


細菌培養の結果は好気性菌は陰性、嫌気性培養検査ではFusabacterium 属が認められました。ドレーン抜去後無事退院し、現在のところ再発もなく元気に過ごしてくれてます!!
膿胸は正しい治療がなされても死亡率62%と致死率の高い疾患で原因がはっきりとしないことが少なくありません。今回は飼い主様の同意も早く、より早期から胸腔ドレーンを設置できたことが救命の鍵だったと感じています!
その他の記事
-
「目が見えていないかも…」考えられる原因とは?
犬は人よりも年を取るスピードが速く、7歳を超えるとシニア期に入ります。 年を取れば取るほど病気も増えていきますが、目もその一つです。 「最近物によくぶつかるよう…
2年前 -
猫の心筋症:肥大型心筋症(HCM)
心筋症には4つの代表的な分類が存在します。①肥大型心筋症(HCM)、②拘束型心筋症(RCM)、③拡張型心筋症(DCM)、④不整脈源生右室心筋症(ARVC)の4つに分類されて…
3年前
-
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …
11か月前 -
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…
7年前 -
内視鏡 異物除去
内視鏡症例をご紹介いたします。 果物の種を飲み込んでしまったワンちゃんで内視鏡によって摘出を行いました。 異物、誤食の中で桃の種など果物の種は高確率に腸…
6年前 -
尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌)
犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…
2年前 -
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD) 僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…
3年前 -
ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症
甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。 診断するにはそれほど複雑…
2年前 -
犬の脾臓腫瘍
犬の脾臓腫瘍は中・高齢で好発し、1/3~1/2が悪性とされています。腫瘍破裂や出血により劇症を呈することもあれば、症状が認められない場合も少なくありません。今回紹介…
3年前 -
胸腺腫摘出を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説
胸腺腫とは犬や猫で稀に発生する前縦隔腫瘍の一つです。 胸腺は若齢動物では発達していますが、基本的に成長とともに萎縮し小さくなります。胸腺腫では、この胸腺の上皮細胞が…
8か月前
