循環器科
循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがあります。獣医療で特に多いのが『犬の弁膜症』と『猫の心筋症』です。当院ではいち早くこの心臓疾患を発見し、飼い主様にお伝できるように通常の診療においても聴診をしっかり行うようにしています。
必ず聴診をしよう👂
弁膜症や心筋症は主に水面下で病状だけが進行していき、症状が出た時には末期になっていることが多く早期発見早期治療が求められます。そこで特に重要となるのは『聴診』です。通院患者さんはもちろん、入院やホテル、トリミングで来院されたわんちゃんねこちゃんの聴診はまめに行っております。獣医師はもちろん、看護師も全員自前の聴診器を持っており、医療スタッフが聴診をこまめに行うことで心雑音を確認し、早い段階で飼い主様にお伝えできる様にしています。


◇心臓検診をお勧めしています
心雑音を発見したあとも、その雑音が有害性雑音なのか無害性雑音なのかはしっかりとした検査を行わないとわかりません。そのためには心エコー検査や胸部レントゲン検査を行う必要があります。また、ねこちゃんの心筋症は聴診で発見できる割合は 約20%と特に低く、そのためにも心臓検診として画像検査が重要です。そこで当院では聴診だけではなく、心臓検診も常日頃からお勧めしています。
主に心臓検診で行うものは『心エコー図検査』になります。


もちろん麻酔は必要ありません。大抵の子は大人しく検査を受け入れてくれます。たまに少し嫌がる子もいますがチュールやおやつを使用し、無理に押さえつけないように工夫して検査を行います。ほとんどの心疾患が心エコー図検査で診断がつきます。下の2つの動画は当院で実際に検査した犬の僧帽弁閉鎖不全症のエコー動画と猫の肥大型心筋症のエコー動画です。
こうして心エコー図検査で診断をつけたのちに、胸部レントゲン検査や血圧測定、心電図検査、血液検査を実施し治療方針を立てていきます。


様々な検査を行い、病態を把握したうえで飼い主様にインフォームドコンセントを行っていきます。飼い主にお伝えする際に当院で気を付けている事は【しっかりと納得した上で治療にを行っていただく】という事です。心臓病で内科治療を行う際には、永続的に投薬が必要になることがほとんどです。特に、症状のない状態からお薬を飲むとなると、『本当に必要な薬なのか、費用はいくらくらいかかるのか』等不安になる方もいらっしゃいます。そういった説明を口頭のみでお伝えするのでなく、インフォームドコンセント用の紙を作成しお渡しするようにしています。

◇循環器おいては緊急救命治療にも対応しております
当院では、慢性期の心疾患にはもちろん、肺水腫や動脈血栓塞栓症(ATE)、心タンポナーデ等の急性期の治療にも対応しております。そういった急性期の救命治療では迅速な対応が求められるため、熟練した獣医師が対応させていただきます。呼吸が荒い、立ち上がれない、、突然倒れてします等の症状が認められた場合はご相談ください。
実際の症例は『犬の僧帽弁閉鎖不全症』や『猫の肥大型心筋症』のコラムをご覧ください
その他の記事
-
全耳道切除・鼓室法切開
慢性外耳炎・中耳炎 慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…
3年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
11か月前
-
べトスキャン イマジストが導入されました!
この度、国内初のAI技術を応用した検査と専門医による診断サービスが可能な"べトスキャン イマジスト"という検査機器が当院に導入されました! …
10か月前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前 -
胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …
2年前 -
2025年 春の健康診断の結果をまとめました!
こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…2か月前 -
先天性門脈体循環シャント
先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…
2年前 -
犬と猫の予防接種の重要性について
愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …
5か月前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
1年前 -
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
2年前