ご予約はこちら
045-932-5151
2024年3月23日

心室中隔欠損症(VSD)

 心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。

 全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(=酸素を多く含む血液。赤い部分)を全身に送り出す役割をしています。

【正常な心臓】

【心室中隔欠損症】

 上下・左右の計4つの部屋に分かれており、このうち下の左右の部屋を隔てる壁に穴が開いてしまう先天性疾患を、心室中隔欠損症(VSD)と呼びます。

< 診断 >

 心室中隔欠損症の診断は、エコー検査にて行われます。

 身体検査で心雑音が認められ、エコー検査を実施して本疾患が見つかるケースが非常に多いです。

心雑音が認められた10か月齢の子犬のエコー像

 

 欠損孔が小さい場合は、無兆候で治療の必要はないことが多く、成長に従って欠損孔が自然に閉じることがあります。

  欠損孔が大きい場合は、血液が左から右へ流れ込む量が多く、繋がっている肺に負担がかかることで肺高血圧症を発症する可能性が高くなり、根本解決には外科手術が必要となります。

 今回紹介した心室中隔欠損症の子は、身体検査にて心雑音が認められたためエコー検査を行ったところ、本疾患が見つかりました。

 幸い欠損孔は小さく症状もありませんでした。現段階では治療の必要はないと判断し、本人もとても元気に過ごしてくれています。

 若い動物さんほど病気が少ないと思われる方が多いと思います。そしてそれも事実ではありますが、先天性疾患というリスクを忘れてはいけないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

その他の記事

  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    3年前
  • 皮膚糸状菌症(真菌感染症)について

    皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌症と呼ばれる真菌(カビの仲間)による伝染性感染症で、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほど報告されて…

    2週間前
  • 猫の子宮蓄膿症は若い子でも発症する?原因と治療について。

    「子宮蓄膿症」とは、避妊手術をしていない女の子の犬/猫ちゃんの子宮に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。 今回は猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。 …

    10か月前
  • 呼吸器科

      『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およ…

    2年前
  • 犬・猫の去勢手術

    【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…

    2年前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    2年前
  • 腹腔鏡下肝生検

     ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …

    1年前
  • 犬の外傷性股関節脱臼

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…

    9か月前
  • リンパ節生検を実施した犬の小細胞性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)の症例

     慢性リンパ球性白血病(CLL)は腫瘍化したリンパ系細胞が分化能を有しているために成熟リンパ球が増加する疾患で、腫瘍性病変の原発部位が骨髄である場合は慢性リンパ性白…

    10か月前
  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    3年前