2024年3月23日
心室中隔欠損症(VSD)
心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。
全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(=酸素を多く含む血液。赤い部分)を全身に送り出す役割をしています。


上下・左右の計4つの部屋に分かれており、このうち下の左右の部屋を隔てる壁に穴が開いてしまう先天性疾患を、心室中隔欠損症(VSD)と呼びます。
< 診断 >
心室中隔欠損症の診断は、エコー検査にて行われます。
身体検査で心雑音が認められ、エコー検査を実施して本疾患が見つかるケースが非常に多いです。

欠損孔が小さい場合は、無兆候で治療の必要はないことが多く、成長に従って欠損孔が自然に閉じることがあります。
欠損孔が大きい場合は、血液が左から右へ流れ込む量が多く、繋がっている肺に負担がかかることで肺高血圧症を発症する可能性が高くなり、根本解決には外科手術が必要となります。
-65fd27b8539ba.jpg)
今回紹介した心室中隔欠損症の子は、身体検査にて心雑音が認められたためエコー検査を行ったところ、本疾患が見つかりました。
幸い欠損孔は小さく症状もありませんでした。現段階では治療の必要はないと判断し、本人もとても元気に過ごしてくれています。
若い動物さんほど病気が少ないと思われる方が多いと思います。そしてそれも事実ではありますが、先天性疾患というリスクを忘れてはいけないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
その他の記事
-
高カルシウム血症
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
1年前 -
食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例
食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…
7か月前
-
循環器科
循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがありま…
2年前 -
フィラリア予防
毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要なの…
2年前 -
腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術
潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…
1年前 -
「目が見えていないかも…」考えられる原因とは?
犬は人よりも年を取るスピードが速く、7歳を超えるとシニア期に入ります。 年を取れば取るほど病気も増えていきますが、目もその一つです。 「最近物によくぶつかるよう…
1年前 -
2025年 春の健康診断の結果をまとめました!
こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…3か月前 -
2024年の春の健康診断まとめ
今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…
1年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
2年前 -
酸素中毒
皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…
3年前