腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術
潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣下行がみられない場合は潜在精巣と判断する説がある一方で犬種によっては精巣下行が遅延し、6ヶ月までは判断できないとする説もあります。個人的な経験では1歳を超えて精巣が下行した稀なケースも経験しています。
潜在精巣の診断には触診が重要です。陰嚢内に精巣が確認できない場合は鼠径部の皮下や腹腔内に存在している可能性が高いため、触診で見つかられない場合は超音波検査で探します。腹腔内に精巣が存在している場合は腫瘍化をしやすく、捻転することもあるため手術が推奨されます。

皮下の潜在精巣を摘出する場合は精巣の直上の皮膚を切開して精巣を露出した後は通常の去勢手術と同様に血管の処理をして皮膚の縫合をします。
腹腔内の潜在精巣を摘出する場合は皮膚の切開に加えてお腹の筋肉も切った上で内臓の中から精巣を探し出さなければいけません。すぐに見つかる場合もあればお腹を大きく開けないと見つけられないこともあります。(特に大型犬では大変です。)

当院では腹腔鏡を使って腹腔内で精巣を探し出し、その直上の皮膚を切開することで最小限の傷口で精巣を取り出すことができます。


腹腔内の精巣をお腹の外に出したら、定法通りに精管や血管を結紮し、精巣を切除します。


このように腹腔鏡を使うとお腹を大きく開けて精巣を探す必要がないため、潜在精巣を摘出する傷口は小さくできます。傷口が小さい分身体への負担も少なく、このワンちゃんは手術当日に退院することができました!
身体が小さい場合は適応にならないこともありますが、腹腔鏡や内視鏡を使用した低侵襲手術をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
その他の記事
-
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
7年前 -
幽門狭窄の症例に対して内視鏡下でポリペクトミーを実施した犬の1例
ご飯を食べてから時間が経っているのに吐き戻すなんてことはありませんか? 嘔吐という症状はよく認められる症状のひとつなため、どんな疾患でも考えられるものになります。…
6か月前
-
侮ってはいけないノミ・ダニ予防について解説 | 痒いだけでは済まない場合もあります
ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…
3年前 -
ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症
甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。 診断するにはそれほど複雑…
2年前 -
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
3年前 -
眼球メラノサイトーマに対して眼球摘出を実施した犬の1症例
最近眼が充血している、眼脂が出てくるなどの症状はありませんか?もしかしたら、目の腫瘍が隠れている可能性もあります。 眼球や眼球内にできる腫瘍は確認がしづらく、見つ…
4日前 -
犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…
2年前 -
犬の口臭の裏に潜むリスクとは?|考えられる原因と対策を解説
愛犬の顔に近づいたとき、「いつもより口が臭うかも…」と感じたことはありませんか? こうしたニオイは単なる不快な症状ではなく、犬の体の中で起きている異常を知らせ…
1年前 -
犬の胆嚢粘液嚢腫について | 進行してから症状が現れる恐い病気でもあります
胆嚢粘液嚢腫とは主に犬で多く見られる疾患で、胆嚢という臓器に可動性の乏しい粘液が過剰に溜まることで発症するとされています。一昔前までは稀な疾患とされていましたが、近年では…
8か月前 -
肺高血圧症
今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)』です。
肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い…6年前


