全耳道切除・鼓室法切開
慢性外耳炎・中耳炎
慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症に続発し、管理困難になる犬種が存在します。他の犬種であっても、原因にアレルギーなど背景疾患が存在する場合や、薬剤耐性菌が悪化要因になっている場合は治療が難航することが多く、臨床医や飼い主様を困らせる疾患です。今回は集中的に内科療法を行ったにも関わらず反応が乏しく、中耳炎を発症したため外科的治療に移行した症例をご紹介いたします。
症例
犬種:フレンチ・ブルドッグ
年齢:7歳2ヶ月
性別:避妊メス
既往歴 皮膚アレルギー疾患 既往歴
経過
以前から慢性外耳炎を繰り返しており、右の鼓膜前の垂直耳道の肥厚が重度で閉塞が認められました。内科治療を約2ヶ月ほど集中的に行ったが治療反応が乏しかったため、全耳道切除を計画し同時にCT検査を実施致しました。


CT検査では、右側水平耳道及び鼓室包内に占拠性病変認めたため外耳道閉塞及び中耳炎の併発と判断し全耳道切除に加えて鼓室包切開術も併せて行いました。
全耳道切除術および鼓室包切開術




外耳道開口部の周囲を切開し垂直耳道を剥離していきます。水平耳道の剥離を行う際には尾腹側に顔面神経が走行しているので傷つけないように気を付けて剥離を行います。鼓室包に達したら外耳道を切断ます。外耳道を切除し終えたらロンジュールや電動ドリルを使用し骨切りを行い鼓室包にアプローチしていきます。




鼓室包から細菌培養検査用のサンプルを採取したのち、鋭匙などを使用し、腰包内に充満している閉塞物質を残らず除去します。最後に洗浄、ドレーン設置及び縫合を行い終了としました。

この症例は病院に通院する頻度も減少し良好なQOLを維持できるようになりました。
その他の記事
-
先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復
腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…
1年前 -
肝中央区域の腫瘍および胆嚢を一括切除した犬の一例
近年では、獣医療の発達とともに犬猫の長寿化が認められるようになり、腫瘍と診断される子も増えてきています。腫瘍の中でも肝臓腫瘍は稀であり、肝臓自体は”沈黙の臓器”とも呼ばれ…
4か月前
-
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…
9か月前 -
腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例
腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…
4年前 -
先天性門脈体循環シャント
先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…
3年前 -
猫の心筋症:肥大型心筋症(HCM)
心筋症には4つの代表的な分類が存在します。①肥大型心筋症(HCM)、②拘束型心筋症(RCM)、③拡張型心筋症(DCM)、④不整脈源生右室心筋症(ARVC)の4つに分類されて…
3年前 -
若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは?
皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されてい…
1年前 -
腹腔鏡下肝生検
ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …
3年前 -
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…
7年前 -
2022年の健康診断のまとめ
季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…
4年前
