副腎腫瘍
副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副腎皮質機能亢進症の疑いがある場合は、下垂体性のものとの区別も考慮し、ACTH刺激試験、低用量・高用量デキサメタゾン抑制試験、腹部エコー図検査、CT検査等を実施し、分類していきます。しかし、実際には臨床症状や検査の段階で判断することが難しい場合があるため、確定診断に至るには摘出後の病理組織診断が必要となります。
(小動物腫瘍臨床 Joncol 7-11p 2015.7 ファームプレス より)
ダックスフンド(ミニチュア) 10歳 未避妊雌
子宮蓄膿症の検査のため腹部エコー図検査を実施したところ両副腎の腫大を確認しました(左側副腎が2cm程度、右側副腎が1cm程度に種大)。ACTH刺激試験を実施しましたが診断に至ることができなかったため、飼い主様の希望もありCT検査を実施しました。下垂体の明らかな腫大は無く、両副腎の腫大が認められました。その後、左側副腎の全摘出ならびに子宮卵巣摘出術を行いました。
結果:『副腎皮質癌』
※写真は腹部エコー図検査の画像、手術中の画像、ならびに摘出した腫瘍の画像となります。
術後はアジソン病の徴候もなく良好で、術後3日で退院しました。
しかし、術後10日ほど経過した後反対側の右副腎を腹部エコー図検査で確認したところ、1.5cm程度まで代償的に大きくなっていました。今後は血栓の予防とあわせて、1ヶ月ごとの腹部エコー図検査と血液検査を行いながら経過を追っていくことにしています。

今回の症例では下垂体の腫大が無い状況下で両副腎の腫大が認められた症例でした。両側腫大した副腎を摘出し病理組織診断を行った結果、両側共に副腎皮質腺癌だったという報告もあるため、腫大している副腎がどちらも機能性なのか、片方だけが非機能性なのかは病理組織診断やその後の経過によって判断する必要があると考えられます。


その他の記事
-
侮ってはいけないノミ・ダニ予防について解説 | 痒いだけでは済まない場合もあります
ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…
3年前 -
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
7年前
-
甲状腺腺腫および肺腺癌に対して外科的介入を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説
” 最近食欲はあるのに体重は減ってきている ” ” 落ち着きがなくなり、攻撃的になったり、夜中に鳴くようになった ” このような症状が認められることはありま…
8か月前 -
犬と猫の混合ワクチンについて | どれが家の子に合うの?
コロナの影響によって”ワクチン”という言葉をよく耳にするかと思います。わんちゃん、ねこちゃんと一緒にいると、はがきなどによって混合ワクチンのお知らせが届くと思います…
3年前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
3年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも?
" 最近元気がない " や " 皮膚症状が出てくるようになった " といった症状が見られることはありませんか?もしかしたら、甲状腺機能低下症の初期症状かもしれません。 …
10か月前 -
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…
3年前 -
胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である…
1年前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
2年前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
3年前
