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2026年3月31日

犬と猫のてんかん発作について | その症状もしかしたら発作ではないですか?

“てんかん”と聞くと、発作が起きて意識を失ったり、バタバタ泳いだりするイメージがありますが、てんかんにも様々な種類があります。中にはてんかん発作だと思っていなかったけど、実はてんかん発作の症状だったとなるような症状もあります。

今回はこの”てんかん発作”について詳しく解説していきたいと思います。

📌目次

 

犬猫のてんかんとは?

“てんかん”とは、脳の異常な電気信号によりけいれんなどの発作症状を繰り返す病気になります。脳の病気の中で最も発生頻度の多い病気になります。てんかんの発作の発生率は、犬で0.5~0.75%猫で0.04~0.5%程との報告もあります。

犬猫のてんかんの分類について

てんかんには病因による分類発作型による分類の大きく2つの分類があります。

病因による分類

その原因となる病気によって、特発性てんかんと構造的てんかんに大別されます。

 

1. 特発性てんかん

⇨遺伝的素因以外に、てんかん発作が起こる原因となる病気がない場合になります。

 

 a. 遺伝性(素因性)てんかん

 ⇨てんかんの原因となる遺伝子が見つかっている場合になります。

 b. おそらく遺伝性てんかん

 ⇨家系解析および/またはてんかん個体の家族集積により遺伝的な影響がある場合です。

 c. 原因不明てんかん

 ⇨潜在的な原因がまだ不明で、かつ構造的なものがない場合になります。

 

2. 構造的てんかん

⇨画像検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査および病理組織学的検査などにより特定することが可能な病気がある場合になります。

 

3. 原因不明てんかん

⇨発作の初発年齢など、特発性てんかんの診断基準を満たしてはいないが、各種検査において脳の構造的異常が認められない場合になります。

発作型による分類

発作徴候(出てくる症状)の特徴によって分類したものになります。

 

1. 焦点性発作

⇨特定の領域において生じた異常な電気的活性により引き起こされる発作のこと

 

 a. 運動性

 ⇨顔面のけいれんや四肢の攣縮など、運動に由来した発作のこと

 b. 自律神経性

 ⇨瞳孔散大、流涎、失禁、嘔吐など自律神経系が関連しているもの

 c. 行動性

 ⇨ハエ咬み行動や異常な恐怖反応などの行動性変化に関連した発作のこと

 d. 焦点性発作から全般発作への進展

 ⇨大脳領域の局所で開始した焦点発作が、大脳全体へと広がり全般発作へと移行した場合

 e. 口部自動症

 ⇨口唇を鳴らす、咀嚼運動、舌舐めずり、嚥下動作などの口部を中心とした発作のこと

2. 全般発作

⇨両側の大脳半球を巻き込んで生じる発作で、けいれん性と非けいれん性に大別されます。

 

1) けいれん性全般発作

 a. 硬直性

 ⇨四肢を含む全身の硬直など筋収縮の増強に関わる発作のこと

 b. 間代性

 ⇨四肢のばたつきなど、不随意な筋収縮による発作のこと

 c. 全般強直間代性

 ⇨硬直性と間代性が合わさったもの、発作で良く認められる発作のこと

 d. ミオクロニー発作

 ⇨突然の、かつ瞬間的な全身の筋けいれんを生じる発作のこと(突然尻もちをつくなど)

2)非けいれん性全般発作

 a. 脱力発作

 ⇨突発的に動物が崩れ落ちるような全身の筋緊張の消失がある発作のこと

 b. 欠伸発作

 ⇨瞬間的な動作停止や意識喪失を生じる発作のこと

よく見られる症状について

てんかん発作には、さまざまなタイプがあり、症状の出方は異なります。

 

1. 全般発作(全身がけいれんするタイプ)

最もよくみられる発作のタイプです。

・突然倒れる

・全身が硬く突っ張る(強直期)

・手足をバタバタさせる(間代期)

・よだれが出る

・尿便失禁

・意識がなくなる

全般発作の症状

2. 焦点性発作(部分発作:体の一部だけに症状が出るタイプ)

・顔や口元がピクピク動く

・片足だけがけいれんする

・頭部が振り返る

焦点性発作の症状

3. けいれんを伴わない発作

・ぼーっとする

・反応が鈍くなる

・急に動きが止まる

・意識が一時的に低下する

◎すぐに受診が必要な場合

以下の症状がみられる場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院へご相談ください。

・意識が戻らない

・発作後にぐったりしている

・発作が5分以上続く

・短時間に何度も繰り返す

検査および診断方法は?

一般的にてんかん発作の診断は他のてんかん発作を起こす疾患を除外することで行います。

 

問診

・発作はいつから始まったか

・どのくらいの頻度で起きるか

・発作はどのくらい続くか

・発作の様子(手足が伸びている、よだれ、意識消失など)

・発作の前後の様子(落ち着きがない、ぼーっとする、ふらつきなど)

★発作の動画を撮影して見せていただくと診断にとても役立ちます。

身体検査・神経学的検査

・意識レベル

・姿勢/歩様

・反射

・目の動き

などを確認し、脳や神経に異常がないかを評価します。

血液検査

発作は次のような脳以外の病気でも起こることがあるため、重要な検査になります。

・低血糖

・肝臓病(肝性脳症)

・電解質異常

・腎臓病

・中毒

これらの異常が見つかった場合は、てんかんではなく別の病気による発作と診断されます。

MRI検査

脳の構造に異常がないかを確認するために、MRI検査を行うことがあり、MRIでは次のような病気を確認できます。

・脳腫瘍

・脳炎

・脳出血

・先天的な脳の異常

脳脊髄液検査(CSF検査)

脳炎などの病気が疑われる場合には、脳脊髄液検査を行うことがあり、この検査では、次のような疾患を調べることができます。

・炎症

・感染

・免疫疾患

特発性てんかんの診断

上記の検査を行っても原因が見つからない場合は、特発性てんかんと診断されます。特発性てんかんは、「原因ははっきり分かっていないが、脳の電気活動の異常によって発作が起こる病気」と考えられています。

治療法について

てんかんは適切な診断と治療により、多くの場合で発作のコントロールが可能です。

発作は「脳の電気的な異常な興奮」によって起こり、原因によって治療法が大きく変わります。

 

1. 特発性てんかん(最も多いタイプ)

検査を行っても原因が特定できないてんかんで、特に犬で多く認められます。6か月齢〜6歳頃に初発することが多く、遺伝的素因が関与すると考えられています。

 

主な治療方法

  • ・ 抗てんかん薬の継続的な内服が基本
    •  ○ フェノバルビタール(第一選択になることが多い)
    •  ○ レベチラセタム(副作用が比較的少ない)
    •  ○ ゾニサミド(単剤または併用)
  • ・ 発作の「回数・持続時間・重症度」を下げることが目標

 

治療開始の目安

  • ・ 6か月間で2回以上てんかん発作を起こす
  • ・ 群発発作(短時間に複数回)、重積発作(5分以上の発作)を一回でも起こす
  • ・ てんかん発作の頻度が増えたり、一回の時間が長くなる
  • ・ 発作後の体調不良や異常行動が重篤な場合、または24時間以上持続する場合

 

副作用と管理

  • ・ 眠気、ふらつき、多飲多尿、食欲増加など
  • ・ 長期的には肝機能への影響に注意
  • ・ 定期的な血液検査(薬物血中濃度・肝酵素)を実施

 

重要なポイント

  • 基本的に生涯にわたり治療が必要ですが、1-2年にわたりてんかん発作を起こしていな い場合は投薬の中止を検討することも可能
  • ・ 急な休薬は発作の悪化や重積発作を引き起こす可能性あり

2. 構造性てんかん(脳の異常が原因)

脳腫瘍、脳炎、水頭症、脳出血、外傷など「脳の構造的な異常」によって発作が起こるタイプです。特に高齢で初めて発作が出た場合には強く疑われます。

 

主な原因と治療

  • ・ 脳腫瘍
    •  ○ 外科手術、放射線治療、ステロイドによる対症療法
  • ・ 脳炎(感染性・免疫介在性)
    •  ○ 抗生物質、抗ウイルス薬、ステロイドや免疫抑制剤
  • ・ 水頭症
    •  ○ 内科的管理(利尿薬など)、外科的シャント手術
  • ・ 外傷・出血
    •  ○ 状態に応じた集中治療

 

補助的治療

  • 抗てんかん薬を併用し発作をコントロール

 

診断のポイント

  • MRI検査やCT検査が重要
  • ・ 神経学的検査で異常が見つかることが多い

3. 反応性発作(脳以外の全身の異常が原因)

脳そのものには異常がなく、体の代謝異常や中毒などによって一時的に発作が起こる状態です。

 

主な原因と治療

  • ・ 低血糖(幼齢、腫瘍など)
    •  ○ ブドウ糖投与、原因疾患の治療
  • ・ 中毒(チョコレート、キシリトール、薬物など)
    •  ○ 催吐、吸着、点滴などの解毒治療
  • ・ 肝疾患(門脈体循環シャントなど)
    •  ○ 食事療法、内科治療、必要に応じて外科手術
  • ・ 電解質異常(低カルシウムなど)
    •  ○ 補正治療

 

ポイント

  • ・ 原因を除去・治療すれば発作が消失することが多い
  • ・ 再発防止には基礎疾患の管理が不可欠

4. 発作時のご家庭での対

発作が起きた際は、まず落ち着いて安全を確保することが大切です。

  • ○ 無理に体を押さえない(噛まれる危険があります)
  • ○ 周囲の危険物を避ける(家具の角など)
  • ○ 発作の時間を測る
  • ○ 5分以上続く場合や連続する場合はすぐに受診
てんかん発作の記録の例

■ 飼い主様にお願いしたいこと

てんかんは長期管理が必要な病気です。ご家庭での観察が治療の質を大きく左右します。

  • ○ 発作記録をつける(回数・持続時間・状況・前後の様子)
  • ○ 投薬時間・量を厳守する
  • ○ 定期的な通院と検査を継続する
  • ○ 生活環境の急激な変化を避ける

まとめ

てんかんは「完治を目指す病気」というよりも、「うまくコントロールして付き合っていく病気」です。適切な治療を行うことで、多くの犬猫が穏やかな日常生活を送ることができます。

てんかん発作についてお悩みの場合はお気軽にご相談下さい。

 

※他の神経疾患について⇨こちらから

Q&A

Q. 発作が起こった場合はどうすればいいですか?

A. まずは落ち着いて安全を確保してください。次に周囲の危険物(家具の角など)を避けていただき、可能であれば発作の時間を計測、動画撮影をお願いいたします。発作が5分以上続く場合や連続して起こる場合にはすぐに動物病院を受診してください。

 

Q. どんな症状が出ますか?

A. 全身の痙攣、四肢の硬直、遊泳運動(手足のバタつき)、流涎、鳴く、空中を咬むなど様々な症状認められます。

 

Q. てんかん発作の原因は?

A. 脳の構造的な異常や脳以外の病気、または特発性と言われる原因不明なものがあります。

 

Q. 一度発作が出た場合は一生お薬が必要ですか?

A. 発作の頻度が低い場合(半年に1回以上は起こらないなど)には、すぐには投薬を始めない場合もあります。そのため、発作の頻度によって変わってきます。

 

Q. どんな治療をしますか?

A. 主に抗てんかん薬を用いて、発作の頻度や強度を減らしていきます。基本的には根治ではなく、うまくコントロールしていくことが必要です。

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