ご予約はこちら
045-932-5151
2023年9月17日

犬の乳腺腫瘍

 犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速に増大し、自壊、出血、炎症を起こすこともあります。また、良性の場合も時間の経過とともに悪性に転化することもあり、長期間放置することは推奨されません。

 

乳腺癌(低悪性度)
自壊した乳腺腫瘍
炎症性乳癌

 犬の乳腺は左右5対存在し、乳腺腫瘍は乳腺近傍に発生する皮下腫瘤として認識され、特に乳腺組織の豊富な第4~5乳腺に多く発生する傾向にあります。同じ場所に肥満細胞腫やリンパ腫など、その他の腫瘍が発生することもあるため、針生検を実施することで鑑別をします。一般的には針生検のみで乳腺腫瘍の良性・悪性を判断することは難しいため腫瘍を切除し、病理検査を実施することで最終的な診断をします。

 犬の乳腺腫瘍は腫瘍そのものの大きさにより、臨床ステージが分けられます。

 

 

 乳腺腫瘍を切除する際にはどこまでの乳腺組織を切除するかがポイントになります。考えられる方法としては

①腫瘍のみの摘出

②罹患乳腺の切除

③領域乳腺切除(1~3乳腺、3~5乳腺)

④片側乳腺全切除 or 両側乳腺全切除

(±領域リンパ節の切除)

 

腫瘍のみの切除
罹患乳腺の切除
領域乳腺切除
片側乳腺全切除

 

 「診断と治療を兼ねて」今ある腫瘍のみを切除するのか、「今後の再発を予防するため」にすべての乳腺を切除するのか、犬の年齢や治療中の病気、飼い主さんの希望なども含めて総合的に選択されます。また、未避妊の雌犬では乳腺腫瘍の発生率が高くなるため、卵巣腫瘍や子宮蓄膿症などの病気を予防するも兼ねて同時に避妊手術を実施することが推奨されています。

 

 術後の病理検査の結果によっては抗がん剤による治療が必要になることもありますが、早期に手術された症例では追加の治療が必要ないことが多いです。

 また先述の通り、犬の乳腺腫瘍の発生はホルモン依存性であるとされており、早期に避妊手術を実施することで予防ができます。初回発情前の避妊手術で、乳腺腫瘍の発生率は0.05%、初回発情後では8%、2回目発情以降では26%と、発情の回数と関連があると報告されています。避妊手術にもメリット・デメリットはありますが、乳腺腫瘍に関しては、実施することで大きなメリットがあると言えます。まだ避妊手術を実施されていない方は一度考えていただいても良いかもしれません。

 また、乳腺腫瘍は大きくなると臨床ステージが進み予後も悪くなるため、早期に治療をお勧めします。

 

腫瘍科のページ

その他の記事

  • 胸腺腫摘出を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説

    胸腺腫とは犬や猫で稀に発生する前縦隔腫瘍の一つです。 胸腺は若齢動物では発達していますが、基本的に成長とともに萎縮し小さくなります。胸腺腫では、この胸腺の上皮細胞が…

    3か月前
  • 幽門狭窄の症例に対して内視鏡下でポリペクトミーを実施した犬の1例

    ご飯を食べてから時間が経っているのに吐き戻すなんてことはありませんか? 嘔吐という症状はよく認められる症状のひとつなため、どんな疾患でも考えられるものになります。…

    2か月前
  • 甲状腺腺腫および肺腺癌に対して外科的介入を実施した猫の1症例 | 実際の手術写真を用いて解説

    ” 最近食欲はあるのに体重は減ってきている ” ” 落ち着きがなくなり、攻撃的になったり、夜中に鳴くようになった ” このような症状が認められることはありま…

    4か月前
  • 若い子に稀に見られる疾患、先天性門脈体循環シャントとは? │ 早期発見や実際の治療法について

    先天性門脈体循環シャントは主に若齢の犬ちゃんや猫ちゃんで稀に認められる病気です。 この疾患は特異的な臨床症状を示さないこともあり、詳しい検査をしないと見つからないこと…

    9か月前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …

    6か月前
  • 2023年度 春の健康診断 結果報告🌸

    こんにちは、しょう動物病院です。 今年もあっという間で、残すところ後2か月となりました。急に冷え込み体調を崩してしまう子が増えたように感じます。 例年通り、今年…

    3年前
  • 犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません! ~検査および診断編~

    こちらでは、慢性腎臓病(CKD)における必要な検査および診断について解説していきます。 慢性腎臓病には大きく4つのステージがあり、どのステージにいるのかで治療法や予…

    5か月前
  • 先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復

    腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…

    9か月前
  • 犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!?

    最近「お水を飲む量が多い」「おしっこが薄くて多い」「食欲がありすぎる」などの症状が見られることはありませんか? 副腎腫瘍では症状は多岐にわたり、無症状の場合もあり…

    8か月前
  • 低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)

     膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…

    3年前