猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっくり進行するため飼い主様には分かりづらく気付いたときには手遅れになっていることもあります。
今回、は食欲の低下が認められず、体重減少と間欠的な下痢のみが認められた猫の盲腸腺癌の症例をご紹介します。
症例 14歳5か月 雑種猫 避妊雌
食欲がある割には体重が減ってきているとの事。一時期4.0㎏あった体重は来院時には2.04kgまで減少していました。血液検査では軽度の貧血と高血糖以外には顕著な異常は認められませんでした。腹部エコー検査では結腸リンパ節の腫大と回盲結行部に5層構造の破壊された腫瘤性病変を認めました。(下図)


エコーガイド下にて針生検を行い、リンパ腫などの独立円形細胞の腫瘍を除外した上で、外科的切除を行いました。開腹し、腫瘤を確認すると周囲の腸間膜と癒着しており、自壊も認められました。


近傍リンパ節も腫大が認められましたが、大きな動脈に接していたためすべて取りきることは不可能だったため、切除部位は腫大したリンパ節も切除範囲にできるだけ含まれるように決定し、可能な限り切除しました。切除後結腸と回腸を端々吻合したのち腹腔内を洗浄しアクティブドレーンを設置し、閉腹しました。


術後食欲の減退が良そうされたため食道婁チューブを設置して終了としました。
病理検査の結果は【盲腸腺癌】でした。幸い脈管浸潤、リンパ節の転移もなく完全切除と診断されましたが、消化管の腺癌は高確率に転移する可能性があるので今後の予後にも注意が必要と考えます。
とはいえこの手術に耐えてくれた猫さんは徐々にではありますが食欲も増加し体重も増えておりひとまずは回復傾向で過ごしてくれております。
今回は消化管の腫瘍でしたが、特に高齢の猫さんは症状のわかりにくい病気がたくさんあります。最近体重が減ってきた、食欲が落ちてきた、歳かな?と感じたら一度健康診断のご相談をしてみてください。
その他の記事
-
猫の心筋症:肥大型心筋症(HCM)
心筋症には4つの代表的な分類が存在します。①肥大型心筋症(HCM)、②拘束型心筋症(RCM)、③拡張型心筋症(DCM)、④不整脈源生右室心筋症(ARVC)の4つに分類されて…
3年前 -
胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である…
1年前
-
肋間開胸術による犬の肺腫瘍切除
今回は他院にてレントゲン撮影をした際に肺腫瘍が見つかり、セカンドオピニオンとして当院を受診し、CT検査及び肺葉切除によって腫瘍を摘出した一例を紹介します。 a …
2年前 -
犬の椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫すること…
3年前 -
内視鏡 異物除去
内視鏡症例をご紹介いたします。 果物の種を飲み込んでしまったワンちゃんで内視鏡によって摘出を行いました。 異物、誤食の中で桃の種など果物の種は高確率に腸…
6年前 -
ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症
甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。 診断するにはそれほど複雑…
1年前 -
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…
6年前 -
猫の乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…
2年前 -
猫の心筋症:肥大型心筋症(HCM)
心筋症には4つの代表的な分類が存在します。①肥大型心筋症(HCM)、②拘束型心筋症(RCM)、③拡張型心筋症(DCM)、④不整脈源生右室心筋症(ARVC)の4つに分類されて…
3年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
2年前
