皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤くなっている」、「脱毛している」など臨床徴候がハッキリしているため、気になる飼い主さんも多いようです。
このページではどんな病気が多くて、どんな検査や治療ができるのかを簡単にご紹介します。
ワンちゃんでも猫ちゃんでも年齢によって起こりやすい皮膚疾患が変わります。
子犬や子猫の内に発症しやすい皮膚疾患としては「ノミやダニの寄生」や「真菌症(いわゆるカビ)」などの感染症が挙げられます。特に野良猫ちゃんでは寄生虫の感染が多いので、まずは寄生虫の駆虫・予防から始めましょう。また、排尿などを失敗して身体が汚れてしまうとそのせいで湿疹を起こす子もいます。そのような場合は身体を清潔に保つことで改善することが多いです。子犬、子猫のうちは生活環境を清潔に保ち、予防をしっかりする、栄養バランスの取れた食事を摂ることが大事です。



生後半年を過ぎて3歳くらいまでに発症しやすい皮膚疾患はアレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎です。今まで食べていた食事が徐々に合わなくなったり、皮膚が徐々に弱っていって常に痒がったり。食事のアレルギーは「除去食試験」というアレルギーを起こしにくいご飯を試したり、血液で「アレルギー検査」を実施したりします。アトピー性皮膚炎は数項目の診断基準があり、他の疾患が否定された場合に診断されます。どちらの病気も完治するものではなく、付き合っていく病気になるのでスキンケアや栄養療法、薬物療法などを含めて身体全体の健康を考えながらうまい付き合い方を探していきます。



スキンケア用の入浴剤や保湿剤など



除去食試験に使われる低アレルギー食
シニア期に入って起こりやすい皮膚疾患としては脱毛や膿皮症などです。正確には「甲状腺機能低下症」や「副腎皮質機能亢進症」などの内分泌疾患に伴い皮膚に異常が出ることが多いです。今まではそんなことなかったのに歳を取ってから・・・。という際には皮膚そのものではなく、内臓的な病気やホルモンの病気が関係していることもあります。高齢になって皮膚の病気が出てくる子は血液検査や超音波検査を含めた全身状態の評価をすることも重要になってきます。

細菌に対してどの抗菌薬が効果的かを調べる検査

ホルモン濃度を測定する機械
このように犬の皮膚疾患は多岐に渡りますが、一時的な感染症を除き継続的な治療が必要になる疾患が多いです。特に重要になるのが、シャンプーや保湿剤などを利用した「スキンケア」と療法食やサプリメントを用いた「栄養療法」です。もちろん、痒み止めや免疫抑制剤などの「薬物療法」も必要であれば実施していきますが、全身的な副作用を考慮して可能な限り薬に頼らず、皮膚の状態を改善していくことが理想的な治療だと考えています。
代表的な皮膚疾患に関しては随時症例報告を載せていきますので、お悩みの方はぜひご覧になってください。
- ・食物アレルギー(食物有害反応)
- ・アトピー性皮膚炎
- ・膿皮症
- ・脂漏症
その他の記事
-
犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…
7か月前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
1年前
-
犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは?
瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…
4か月前 -
炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症
炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…6年前 -
ノミ・ダニ予防
ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…
2年前 -
犬・猫の去勢手術
【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…
2年前 -
若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは
皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されてい…
3か月前 -
犬の脱毛|加齢によるもの?病気?
わんちゃんも人と同じように、高齢になると毛の色が変化したり薄くなったりします。これは生理的なものですが、中には病的に脱毛が起こってしまうことがあります。 今回は病的な…
4か月前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
12か月前 -
猫の子宮蓄膿症は若い子でも発症する?原因と治療について。
「子宮蓄膿症」とは、避妊手術をしていない女の子の犬/猫ちゃんの子宮に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。 今回は猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。 …
1年前