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2025年6月26日

若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは

皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されていますが、中でもMicrosporum.canisと呼ばれる菌種による感染が最も多いとされています。

皮膚糸状菌症は免疫の弱い若齢の猫ちゃんでの発生が最も多いですが、環境要因などによって免疫が弱っている場合、大人の猫ちゃんや犬ちゃんでも発生が認められています。この菌はケラチンが豊富な被毛に感染巣を作りますが、免疫が弱ったタイミングで菌が被毛や角質内に侵入することで感染し、脱毛などの症状を引き起こします。

 

よくみられる症状 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

通常、病変はマズル、顔面、頭部、耳介、四肢端、尾に発生することが多く、被毛や毛包を中心に感染し、鱗屑(ふけ)を伴う裂毛や脱毛班、紅斑などが認められます。通常、痒みはないか軽度のことが多いですが、時に強い痒みを伴うこともあります。

 

 

診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

・ウッド灯検査:紫外線照射により、皮膚糸状菌が産生する物質を蛍光発色させることで、皮膚糸状菌を疑うことが出来る。

 

・真菌培養検査:特殊な培地に接種することで、周囲の培地を変色させる特性を利用して、早期に皮膚糸状菌の特定を行う。

 

・被毛の直接鏡検:感染している被毛には、菌体(分節分生子)や膨化した被毛などの特徴的な所見が認めれる場合がある。

 

治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

治療に関しては大きく2つの目的があります。

1,動物に対する治療

・全身療法:抗真菌薬を飲むことで成長あるいは発毛した毛の糸状菌の感染を抑えます。体表から糸状菌が検出されなくなるまで、1~2カ月程度かかります。

・外用療法:シャンプーや外用薬を用いて治療を行います。局所の場合は有効ですが、糸状菌は毛根部まで侵入していることが多いため、全身療法が必要な場合もあります。

 

2,生活環境の清浄化

皮膚糸状菌症は動物同士でも伝染しやすく、お家などの環境にも汚染し、人にも伝染する可能性があります。そのため、動物の治療だけではなく環境や同居の子への配慮が必要になってきます。基本は隔離と掃除が必要になります。しかし、隔離といっても感染動物の多くは若齢な子が多いため、掃除がしやすい部屋やある程度許容できる範囲で隔離するのが望ましいです。

 

まとめ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

皮膚糸状菌症は完治するまでに比較的時間がかかることもあり、環境のキレイになっていない場合には再発する可能性もある病気です。また、人にもかかる人獣共通感染症でもあるため、人でも注意が必要となります。子猫さんで上記のような症状が認められた場合には皮膚糸状菌症の可能性もあるので、お近くの動物病院にご相談下さい。

症状の例にいた子猫さんですが、ただしく治療できればこのように症状も良くなっていきます。

 

※他の皮膚疾患についてはこちらから

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