ご予約はこちら
045-932-5151
2022年9月27日

肥満細胞腫

肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため、体表にしこりを見つけた際には全身の検査が必要になります。肥満細胞腫は、性質上、そのしこりをむやみに触ったりぶつけたりなどの刺激を与えることでその周囲が赤く腫れ上がったり、浮腫んだりすることがあります(これをダリエ兆候といいます)ので、しこりが腫れてきた場合にも注意が必要です。

8歳、ボストンテリア、雄。

当院で初めてワクチン接種をする際、数年前からある大きさの変化のないしこりの相談を受けました。

しこりは左大腿部と左の第5乳腺領域の2ヶ所にありました。細胞診検査(針を刺して、とれた細胞を染色して顕微鏡でみる検査)を行い、肥満細胞腫と診断しました。

X線検査、超音波検査、細胞診検査で明らかな遠隔転移は認められなかったため、腫瘍の摘出とステージングのための領域リンパ節切除を実施しました。サージカルマージンは水平で1.5cm、底部で筋膜1枚としました(図)。

病理検査ではKiupel分類(2段階評価)で低グレード、Patnaik分類(3段階評価)でグレードⅡ、リンパ節転移はなく、完全切除が達成されました。

手術後、現在は再発もなく元気に過ごしています。

肥満細胞腫は、グレードが低く完全切除が達成されれば、予後が良好な腫瘍疾患です。

別名「偉大なる詐欺師」とも呼ばれ、その見た目だけでは判断が難しい腫瘍です。昔からあるしこりでも、予防のときや何かの折に獣医さんに相談しましょう!

その他の記事

  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    3年前
  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    2年前
  • 猫の会陰尿道造瘻術

     尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。   …

    2年前
  • 心室中隔欠損症(VSD)

     心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。  全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…

    2年前
  • 2022年の健康診断のまとめ

    季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…

    2年前
  • 膝蓋骨脱臼の整復

     膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床…

    2年前
  • ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症

    甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。   診断するにはそれほど複雑…

    7か月前
  • 2023年度 春の健康診断 結果報告🌸

    こんにちは、しょう動物病院です。 今年もあっという間で、残すところ後2か月となりました。急に冷え込み体調を崩してしまう子が増えたように感じます。 例年通り、今年…

    2年前
  • 腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術

     潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…

    1年前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    7か月前