腫瘍科
獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。
犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平均寿命 15.62 歳
(一般社団法人ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査2022年より抜粋)

当院でも腫瘍性疾患で来られる患者さんは多くいらっしゃいます。
体表にできた見える、触れる「しこり」をみつけて病院を受診する症例や健康診断で偶然「しこり」がみつかる症例、具合が悪くて検査を実施したところ胸の中やお腹の中に「しこり」がみつかる症例など様々です。
また、血液検査から腫瘍が疑われる症例もいますが、獣医療では医学で確立されているような腫瘍マーカーはまだまだ発展途上です。一般的にはX線検査や超音波検査でしこりをみつけることが腫瘍の早期発見につながります。



ここでは腫瘍の診断ステップを簡単にご説明します。
一般的には単一の「しこり」が見つかった場合はその「しこり」に対して針を刺します(細胞診検査)。針で採取された細胞を評価することで、炎症なのか、腫瘍が疑わしいのか、腫瘍だとしたら悪性と良性のどちらの可能性が高いのかを判断します。注意点としてはあくまで一部の細胞を評価するため、100%正しい診断とは限らない点です。
細胞診検査で診断がつかない場合は生検パンチやツルーカット針などを用いてしこりの一部を採取する生検を行い、病理組織検査を実施します。病理組織検査を実施することでほとんどの場合は「しこり」がなんなのかを確定することができます。



「しこり」が悪性腫瘍、いわゆるガンだった場合、腫瘍の拡がり、リンパ節への浸潤、さらに遠隔への転移があるかどうかを調べることで腫瘍のステージを判断します。
X線検査や超音波検査でも簡易的にステージを判断することはできますが、より詳細な状態を把握するためにはCT検査を実施するのが望ましいです。
このようにガンの種類とステージが確定すると、どのような治療をしていくのかの選択肢が考えられるようになります。
治療の選択肢として①外科療法②放射線療法③化学療法④その他(免疫療法など)が挙げられます。
基本的に転移がなく、切除可能な腫瘍に関しては外科療法を実施するのが、根治の可能性が一番高い治療法です。すでに転移を起こしていて外科療法が適応にならないような腫瘍や、拡がりが大きく外科療法だけでは取りきれないような腫瘍には放射線療法や化学療法を組み合わせて治療していきます。また、これらの治療は少なからず身体に負担がかかってしまうので、腫瘍が末期まで進行していたり、高齢で負担のかかる治療に耐えられない場合には緩和的な治療として免疫療法や高濃度ビタミンC療法、温熱療法などの代替療法が選択されます。
症例の状態によって最適な治療法が異なるのが、ガン治療です。当院では経験豊富な獣医師がご家族様と対話をしながら治療プランをご提案させていただきます。根治を目指して積極的な治療をしていくのか、緩和を目的に負担のかからない治療をしていくのか、状況に応じてその都度相談させていただきますので、腫瘍性疾患でお困りの方はお気軽にお問い合わせいただければと思います。
※新しい「がん」の検査が可能になりました。詳細はリンク先をご覧ください。
代表的な腫瘍(随時更新)
その他の記事
-
ノミ・ダニ予防
ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…
2年前 -
尿石症
尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…
5年前
-
犬の乳腺腫瘍
犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速…
2年前 -
心室中隔欠損症(VSD)
心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。 全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…
1年前 -
胆泥症・胆嚢粘液嚢腫
胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁の貯留を行う臓器で、方形葉と内側右葉に埋まるように位置しています。胆嚢から発生する疾患には胆石、胆泥、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢炎などがあります。…
3年前 -
皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…
2年前 -
肥満細胞腫
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…
3年前 -
高カルシウム血症
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
1年前 -
総合診療科
例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…
2年前 -
泌尿器科
泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。 高齢になると腎臓…
2年前