ご予約はこちら
045-932-5151
2023年9月9日

腫瘍科

 獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。

 

犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平均寿命 15.62 歳

(一般社団法人ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査2022年より抜粋)

 

 

 

 当院でも腫瘍性疾患で来られる患者さんは多くいらっしゃいます。

 体表にできた見える、触れる「しこり」をみつけて病院を受診する症例や健康診断で偶然「しこり」がみつかる症例、具合が悪くて検査を実施したところ胸の中やお腹の中に「しこり」がみつかる症例など様々です。

 また、血液検査から腫瘍が疑われる症例もいますが、獣医療では医学で確立されているような腫瘍マーカーはまだまだ発展途上です。一般的にはX線検査や超音波検査でしこりをみつけることが腫瘍の早期発見につながります。

 

指にできた扁平上皮癌
肺の腺癌
副腎の褐色細胞腫

 

 ここでは腫瘍の診断ステップを簡単にご説明します。

 一般的には単一の「しこり」が見つかった場合はその「しこり」に対して針を刺します(細胞診検査)。針で採取された細胞を評価することで、炎症なのか、腫瘍が疑わしいのか、腫瘍だとしたら悪性と良性のどちらの可能性が高いのかを判断します。注意点としてはあくまで一部の細胞を評価するため、100%正しい診断とは限らない点です。

 細胞診検査で診断がつかない場合は生検パンチやツルーカット針などを用いてしこりの一部を採取する生検を行い、病理組織検査を実施します。病理組織検査を実施することでほとんどの場合は「しこり」がなんなのかを確定することができます。

 

FNA用の注射針など
生検用トレパン
アキューラ バイオプシーシステム

  

 「しこり」が悪性腫瘍、いわゆるガンだった場合、腫瘍の拡がり、リンパ節への浸潤、さらに遠隔への転移があるかどうかを調べることで腫瘍のステージを判断します。

 X線検査や超音波検査でも簡易的にステージを判断することはできますが、より詳細な状態を把握するためにはCT検査を実施するのが望ましいです。

 

富士フィルムメディカルHPより

 このようにガンの種類とステージが確定すると、どのような治療をしていくのかの選択肢が考えられるようになります。

 治療の選択肢として①外科療法②放射線療法③化学療法④その他(免疫療法など)が挙げられます。

 

 基本的に転移がなく、切除可能な腫瘍に関しては外科療法を実施するのが、根治の可能性が一番高い治療法です。すでに転移を起こしていて外科療法が適応にならないような腫瘍や、拡がりが大きく外科療法だけでは取りきれないような腫瘍には放射線療法や化学療法を組み合わせて治療していきます。また、これらの治療は少なからず身体に負担がかかってしまうので、腫瘍が末期まで進行していたり、高齢で負担のかかる治療に耐えられない場合には緩和的な治療として免疫療法や高濃度ビタミンC療法、温熱療法などの代替療法が選択されます。

 

 症例の状態によって最適な治療法が異なるのが、ガン治療です。当院では経験豊富な獣医師がご家族様と対話をしながら治療プランをご提案させていただきます。根治を目指して積極的な治療をしていくのか、緩和を目的に負担のかからない治療をしていくのか、状況に応じてその都度相談させていただきますので、腫瘍性疾患でお困りの方はお気軽にお問い合わせいただければと思います。

新しい「がん」の検査が可能になりました。詳細はリンク先をご覧ください。

 

代表的な腫瘍(随時更新)

犬の皮膚肥満細胞腫

犬の乳腺腫瘍

犬の肺腫瘍

犬の慢性リンパ球性白血病/小細胞性リンパ腫

犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)

猫の盲腸腺癌

犬の脾臓の組織急性肉腫

猫の乳腺腫瘍

その他の記事

  • 角膜疾患(潰瘍性角膜炎)

    角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …

    1年前
  • 犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主…

    3か月前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    3年前
  • 犬と猫の予防接種の重要性について

    愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …

    2か月前
  • 両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫

    救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。   症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…

    10か月前
  • 腹腔鏡下肝生検

     ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …

    1年前
  • セカンドオピニオン

    セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…

    2年前
  • 犬の脾臓腫瘍

    犬の脾臓腫瘍は中・高齢で好発し、1/3~1/2が悪性とされています。腫瘍破裂や出血により劇症を呈することもあれば、症状が認められない場合も少なくありません。今回紹介…

    2年前
  • 泌尿器科

     泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。  高齢になると腎臓…

    2年前