2023年5月13日
鼻梁にできた多小葉性骨腫瘍
多小葉性骨腫瘍は犬の頭蓋骨にできることの多い骨の腫瘍です。局所で拡大し脳を圧迫することで神経症状を示すことも少なくありません。今回は鼻梁部(鼻と頭蓋骨の間)にできた多小葉性骨腫瘍の症例をご紹介いたします。
フレンチブルドッグ 8歳 避妊雌
鼻梁部が膨れてきたとの事で来院されました。一般状態は良好でしたが少し元気がないかもとの事。

触診では固い組織が触知され、熱感や疼痛は認められませんでした。頭部レントゲン検査では鼻梁部にレントゲン不透過性の陰影が確認されました。腫瘤性病変を疑いFNAを行いましたが腫瘍細胞は採取できなかったためCT検査を行いました。


CT検査では鼻梁部に放射状の骨増生を中心とした、体軸1.7cm×高さ2.1cmの腫瘤性病変を認め、造影剤にて増強を認めたことにより腫瘍性病変を疑うと診断されました。また幸いなことに鼻腔内への浸潤は認められなかったため摘出を行いました。
皮膚を切開すると直下に腫瘤病変を確認しました。周囲の軟部組織と腫瘤を剥離し腫瘤病変のみを露出させると頭蓋骨から派生していることが顕著にわかります。


周囲の骨と腫瘤の境目は不明瞭であり、発生部位からも十分なマージンの確保は不可能と判断しできる限りの切除にとどめました。切除にはラウンドバーを使用しました。



深部方向には浸潤してませんでしたので奥に向かう部分は切除しきることができました。病理検査は珠前のCTの見解と一致し、骨の多小葉性腫瘍でした。術後一時的な皮下気腫は生じてしまいましたが、経過は良好で現在はドキソルビシンを使用した補助治療を行っております。(偶発的にCTにて心臓腫瘍も確認されました)。
その他の記事
-
新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定
獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…
2年前 -
最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜
はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…
6か月前
-
腹腔鏡下肝生検
ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …
2年前 -
尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌)
犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…
2年前 -
犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主…
1年前 -
酸素中毒とは? | 酸素濃度は高ければいいわけではない!気を付けたい酸素中毒について
皆さんは "酸素中毒" というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒があ…
4年前 -
犬と猫の高カルシウム血症について
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
2年前 -
かかると大変なフィラリア症や予防について解説
毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要な…
3年前 -
肺高血圧症
今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)』です。
肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い…6年前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
3年前
