口腔内腫瘤に対して下顎部分切除を実施した犬の1症例
犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも、悪性黒色腫は悪性度の高い口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半数以上を占めているとの報告もあります。

また、犬に発生する腫瘍の中では、乳腺癌、肥満細胞腫に次いで3番目に多い腫瘍になります。今回は口腔内に悪性黒色腫が発生した犬の症例をご紹介します。

📌目次


症例情報
症例は12歳11カ月の柴犬の男の子です。歯茎の腫れを見つけ、他院にて検査をしたところ、悪性黒色腫と診断され、治療を目的に本院を受診されました。

検査結果
CT検査の結果では、左下顎の犬歯~第1前臼歯領域に造影増強が見られました。また、左下顎リンパ節の腫大および造影増強が認められ、リンパ節への転移が認められました。

口腔内腫瘍ではTNM分類といった、T:腫瘍の大きさ、N:局所リンパ節への転移の有無、M:遠隔転移の有無の3項目から臨床ステージが決められます。

この症例ではステージⅡが疑われたため、根治の目的で外科手術を実施することとなりました。

実際の手術写真
ここからは実際の手術写真を用いて手術内容を簡潔に載せていきます。
出血なども認められるため、血が苦手な方はご遠慮下さい。
苦手な方はこちらから結果のページまで飛べます⇨こちら(病理組織学的検査の結果まで飛びます)






病理組織学的検査結果
口腔内腫瘍は悪性黒色腫、摘出したリンパ節も同様に悪性黒色腫と診断されリンパ節への転移性病変と診断されました。

悪性黒色腫を外科手術で治療した場合の生存期間中央値は150~318日、1年生存率は35%以下とも報告されています。

まとめ
本症例では、術後に抗がん剤も開始していますが、術後1年ほど経過しても元気に過ごしています。
口腔内に何かできものが出来てきたや、最近口をやたら気にするなどの場合は口腔内腫瘍の可能性もあります。その場合は、お近くの動物病院さんへぜひご相談下さい。
※他の腫瘍疾患について⇨こちら

Q&A
Q. 悪性腫瘍だった場合は必ず手術が必要ですか?
A. いいえ。腫瘍の種類によっては、放射線治療や抗がん剤などの内科治療、免疫療法などが適応になる場合もあります。
Q. 口の中のしこりは出来たら悪性ですか?
A. 必ずしも悪性とは限りません。腫瘍に対して細胞診検査や病理学的検査をすることで腫瘍の種類が分かってきます。
Q. 手術以外の選択肢はありますか?
A. はい。腫瘍の種類によっては、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法などの選択肢を取ることが出来る場合もあります。
Q. 口腔内腫瘍の場合はどのような症状がでますか?
A. いつもと違う強い口臭、流涎、ご飯を食べにくそうにする、口元や口回りを気にするようになるなど様々な症状が出てくる可能性があります。
Q. 予防や早期発見のコツはありますか?
A. 日頃からお口の中を観察しておくことが重要です。また、歯磨きの習慣をつけておくことで、小さな変化に早期に気づくことが出来る場合もあります。
その他の記事
-
「目が見えていないかも…」考えられる原因とは?
犬は人よりも年を取るスピードが速く、7歳を超えるとシニア期に入ります。 年を取れば取るほど病気も増えていきますが、目もその一つです。 「最近物によくぶつかるよう…
2年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
3年前
-
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~治療編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症例で必要な治療について解説していきます。 副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、生涯にわたる投薬が必要になりますが…
8か月前 -
膝蓋骨脱臼の整復
膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床…
3年前 -
整形外科
整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。 …
3年前 -
犬と猫の予防接種の重要性について
愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …
1年前 -
内視鏡で誤食した釣り針を摘出
釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…
4年前 -
総合診療科
例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…
3年前 -
熱中症
熱中症とは? 熱中症は高温多湿環境下や過度な運動によって、体内に熱が…
1年前 -
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
7年前
