ご予約はこちら
045-932-5151
2024年9月6日

尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌) 

犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々に大きくなりものによっては腫瘍が破裂・出血し出血ショックを生じたり、巨大化することにより周囲の臓器を圧迫し機能低下を生じることもあります。

Interzoo  Veterinary Oncology vol.11より引用

 

本症例では、以前から肝酵素の上昇が認められ、腹部超音波検査にて肝臓腫瘤が徐々に拡大傾向を示したため外科手術により摘出した肝細胞癌の一例を紹介します。

                   

 

  

本症例は既往歴に胆嚢粘液嚢腫蛋白漏出性腸症が認められたポメラニアンです。一般状態は良好でしたが徐々に腫瘤が拡大傾向になり、同様に肝酵素は上昇傾向にありました。腫瘍の部位の特定と由来を検査するためにCT検査及びFNAを行いました。

 

CT検査においては造影剤が動脈層で腫瘍に入り込み、平衡層で抜けていく wash out像が認められたため、当初は神経分泌系の腫瘍を疑いました。FNAでは残念ながら有意な診断は得られませんでした。現時点で無症状ではありますが、今後さらに腫大が続けば腫瘍自体が自壊し、腹腔内出血のリスクになること、また腫瘍の起源がわからなければ今後の治療方針が定まらないことから外科的摘出をご提案し、飼い主様の承諾を得ました。

 

術式

・開腹時には軽度の癒着が認められたためモノポーラにて癒着を丁寧に剥離

・尾状葉を包んでいる小網を同様に剥がし病変ぶ尾状葉乳頭突起を露出させる

・尾状葉に血液供給しているグリソン鞘を一括でヘモクリップを用いて遮断

・肝臓の実質をサクションと用手でフラクション法にて破砕し肝静脈を露出

・ヘモクリップにて遮断し腫瘤を摘出

術後経過は順調。3日後には無事退院いたしました。 摘出腫瘤の病理学的検査は肝細胞癌でした。

 

肝臓の腫瘍は場合によっては腫大化し、腹腔内に出血を呈することも少なくありません。本症例は当初の診断予想とは結果が異なり肝細胞癌でした。他の肝葉にも結節が認められるので注意深い観察が必要ですが、腫瘍自壊による出血などのリスクは取り除かれました。

 

Link:人医療の肝細胞癌

その他の記事

  • 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬

    胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …

    3年前
  • 高悪性度消化器型リンパ腫を外科摘出後、抗がん剤を行なった猫

    消化器型リンパ腫は猫のリンパ腫のうち最も多くの割合を占めるものであるのと同時に、猫の消化管において最も発生率の高い腫瘍としても知られています。   症例 猫 雑…

    2年前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …

    6か月前
  • 犬と猫の糖尿病について | よくお水を飲んだり、おしっこの量が多いのは初期症状かも?

    "糖尿病"とはインスリンと言われる血糖値を調整するホルモンが不足することで、持続的な高血糖など、様々な代謝異常を起こす病気になります。この病気は、人でも7大生活習慣病の1…

    2か月前
  • 犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

    今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…

    1年前
  • 犬・猫の避妊・去勢手術におけるメリット・デメリット

    新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…

    3年前
  • 犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません! ~治療編~

    こちらの記事では慢性腎臓病(CKD)の治療法について解説していきます。 今までの記事でも解説した通り、慢性腎臓病の治療法はステージによって治療も異なります。 …

    5か月前
  • 肥満細胞腫

    肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…

    4年前
  • 肋間開胸術による犬の肺腫瘍切除

    今回は他院にてレントゲン撮影をした際に肺腫瘍が見つかり、セカンドオピニオンとして当院を受診し、CT検査及び肺葉切除によって腫瘍を摘出した一例を紹介します。 a …

    2年前
  • 幽門狭窄の症例に対して内視鏡下でポリペクトミーを実施した犬の1例

    ご飯を食べてから時間が経っているのに吐き戻すなんてことはありませんか? 嘔吐という症状はよく認められる症状のひとつなため、どんな疾患でも考えられるものになります。…

    2か月前