猫の会陰尿道造瘻術
尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。

ストルバイト結石はサプリメントや食事療法で溶解することが出来る結石ですが、食事に好き嫌いがあったり、体質的に結石ができやすい猫ちゃんでは治療がうまくいかないことがあります。細かな砂状の結石が大量にあると、尿道閉塞を起こしてしまい尿が出せずに急性腎障害を起こしてしまいます。


そういった内科管理が難しい子では手術で膀胱内の結石を取り除く方法もありますが、時間とともに再発することが多いです。その場合は尿道閉塞を防ぐ緩和的な手術として「会陰尿道造婁術」を実施することがあります。尿道の一部を切開して開口部を太くし、結石がつまらないようにしてあげる手術です。
実際に手術をした症例の外貌です。多頭飼育のため内科管理が困難で、何度も尿道閉塞を繰り返していましたが、術後はしっかり尿が出るようになりました。
当院では包皮筒状利用法を用いて手術をしますので、一見して普通の猫ちゃんと同じようにみえます。


この方法だと手術の手技はやや煩雑になりますが、術後の自傷行為による尿道開口部の狭窄が起きにくいため、再手術のリスクが低くなります。
会陰尿道造瘻術を実施することで膀胱炎や結石が治るわけではありませんので、内科管理は必要ですが、尿道閉塞を起こすリスクは大幅に軽減されます。繰り返し尿道閉塞を起こしていると腎臓にダメージが蓄積して早い段階から慢性腎臓病になり、寿命を短くしてしまう可能性がありますので、尿石症でお困りの方は一度ご相談いただければと思います。また、膀胱内の結石を小さな傷で摘出する低侵襲手術も実施していますので、ご参考にしていただければと思います。
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