ご予約はこちら
045-932-5151
2023年5月2日

低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)

 膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認されることもあります。実際に一般的な開腹手術では20%以上の症例で結石の取り残しがあったとする報告もされています。従来法で結石を取り残さないようにするためには膀胱を大きく切開する必要がありましたが、傷口が大きく動物の負担も大きくなってしまします。

 そこで今回は近年動物医療でも普及されつつある細径内視鏡を用いて、小さな傷で、膀胱内・尿道内の結石を摘出した犬の1例を報告します。

 症例は過去に結石の手術の経験があり、短期間で再発していることからセカンドオピニオンを求めて来院されました。結石は小さく臨床徴候も乏しいですが、結石が尿道内に移動してしまうため尿道閉塞のリスクを考慮して手術を希望されました。

尿道内の結石
尿道内の結石を膀胱内に押し戻した後
皮膚に小切開を加えて、膀胱をつり出し内視鏡を挿入

膀胱内に結石は見当たらず
尿道内に結石を確認
カテーテルで結石を膀胱内へ
膀胱内に戻した結石を回収
回収した結石
内視鏡を用いた方法
従来の方法(傷口は2~3倍ほど)

 今回は内視鏡を用いた方法で膀胱内・尿道内の結石を摘出しました。従来の方法と比較して傷口が小さいうえに膀胱内をよく観察できるため、結石の取り残しの心配がありません。また、今回のように尿道内に結石が移動してしまう場合には摘出ができないまま終わってしまうことも考えられます。

 この内視鏡を用いた方法であれば動物の負担の少ない手術ができるので、内科治療に反応しない場合には早期の摘出手術を考えてもよいと思います。また、術後には結石を予防するサプリメント等もありますので、膀胱結石でお悩みの方は当院までお問い合わせください。

その他の記事

  • 犬アトピー性皮膚炎|病態について

    アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…

    1年前
  • 両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫

    救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。   症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…

    1年前
  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    3年前
  • 犬の乳腺腫瘍

     犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速…

    2年前
  • 犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫

    犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半…

    1年前
  • 腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例

    腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…

    3年前
  • 紐状異物

    紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…

    3年前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    9か月前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    6年前