2020年4月22日
尿石症
尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そのまま放置すると、腎不全などの重篤な疾患につながる危険性があります。
国内のある報告では来院症例全体の約1.5%が尿石症と診断されており、一般的に良く見られる疾患の1つになります。治療法としては、結石の摘出手術ならびに食事療法を行いますが、結石の大きさ、種類、臨床症状の有無などの条件で治療法が異なります。
(犬の内科診療 Part1 266-275p 2020.3 緑書房 より抜粋)
雑種 12歳 避妊雌
主訴:頻尿および血尿
腹部エコー図検査と腹部レントゲン検査を行ったところ、非常に大きな膀胱結石を認めました。飼い主様の希望もあり、膀胱結石摘出術を行いました。高齢でさらに片方の腎臓が萎縮しており、多少リスクはありましたが約1時間半で無事手術は終わりました。心配していた術後の腎不全もなく、術後順調に回復し退院していきました。
*写真は結石の写真、レントゲン写真、術中の写真になります。
*結石分析の結果はストラバイト結石でした



この症例は以前に一度結石の手術を行い、術後も療法食を使用していた症例です。しかし結石が再発し今回の手術となりました。結石は体質によるものも多いため、一度結石の疑いが出てしまった子は、定期的に尿検査やエコー検査を勧めようと再認識する症例でした。
尿路結石は食事によって改善するものも存在します。定期的な尿検査やエコー図検査で早期発見することは、結果的に動物の負担を減らすことにつながると考えられます。
その他の記事
-
気管支鏡を実施した猫の症例
呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…
2年前 -
消化器科
『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…
2年前
-
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
8か月前 -
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
2年前 -
犬と猫の予防接種の重要性について
愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …
1か月前 -
全耳道切除・鼓室法切開
慢性外耳炎・中耳炎 慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…
3年前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
2年前 -
高カルシウム血症
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
12か月前 -
循環器科
循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがありま…
2年前 -
鼻梁にできた多小葉性骨腫瘍
多小葉性骨腫瘍は犬の頭蓋骨にできることの多い骨の腫瘍です。局所で拡大し脳を圧迫することで神経症状を示すことも少なくありません。今回は鼻梁部(鼻と頭蓋骨の間)にできた多小葉性…
2年前