犬と猫の糖尿病について | よくお水を飲んだり、おしっこの量が多いのは初期症状かも?
“糖尿病”とはインスリンと言われる血糖値を調整するホルモンが不足することで、持続的な高血糖など、様々な代謝異常を起こす病気になります。この病気は、人でも7大生活習慣病の1つとされていて発生率の多い病気となります。
糖尿病と聞くと不安に感じる方も多いかと思いますが、しっかりとコントロールができれば寿命を延ばすことができ、大切なご家族と一緒にいる時間を増やすことができます。
今回は、そんな糖尿病について解説していきます。

📌目次

糖尿病とは?
膵臓にはインスリンといわれるホルモンがあり、血液中の糖分を細胞内に取り込むことで、細胞が糖をエネルギーに変換する働きを促進します。しかし、このインスリンが何らかの原因で不足したり、うまく作用しないことで、血液中の糖分が増え、糖尿病を引き起こします。この病気では、尿から糖分が検出されるため、糖尿病と呼ばれています。
糖尿病はヒトではよく見られる病気で、世界的に成人の10人に1人が糖尿病であるとのデータもあります。対して、犬では0.1~0.3%程度、猫では0.5%~1%程度の発生率とされています。

犬と猫の糖尿病について
糖尿病は大きくⅠ型糖尿病とⅡ型糖尿病の2つに分類されます。
- ・Ⅰ型糖尿病:膵臓(膵β細胞)が壊れてしまい、インスリンを分泌できないために高血糖になります。
- ・Ⅱ型糖尿病:インスリンは分泌できるが、分泌が低下していたり、インスリンが十分に機能しないため、高血糖になります。
犬ではⅠ型糖尿病が多く、猫ではⅡ型糖尿病が多いとされています。

よく見られる症状とは?
飼い主様が気づきやすい症状としては、次のような変化がみられたら注意が必要です。
犬と猫で共通でみられる症状
・水をたくさん飲む、おしっこの量や回数が増える
・よく食べるのに痩せてくる
・元気がない
・毛づやが悪くなる
犬でみられる症状
・白内障(目が白く濁る)
猫でみられる症状
・後ろ足がふらつく、かかとをつけて歩く

糖尿病を放置することで、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群といった、より重度な病態に移行する場合があります。
その際には、以下のような症状がみられる場合があります。
・脱水
・元気消失
・食欲低下
・アセトン臭のする口臭

糖尿病の原因について
犬と猫では糖尿病の分類が異なるため、原因になるものも異なってきます。
犬の糖尿病
犬では、インスリンを作る力が低下するタイプ(人のⅠ型糖尿病と類似)が多くみられ、以下のような原因が考えられています。
・遺伝的素因
・免疫介在性のβ細胞の破壊
・膵臓分泌腺の疾患(膵炎)
・先天性のβ細胞低形成など
・他の内分泌疾患に続発するもの
・医原性
など
猫の糖尿病
猫では、インスリンの分泌低下や機能不足などのタイプ(Ⅱ型糖尿病と類似)が多く、以下の原因が考えられています。
・膵炎からの続発
・内分泌疾患からの続発
・医原性
・若年性
・その他

検査および診断について
多飲多尿、体重減少などの臨床徴候がある、数日間にわたり空腹時高血糖が続いている、尿糖が陽性の場合に糖尿病と診断されます。
犬の診断基準
・特徴的な臨床症状(多飲、多尿、体重減少)
・持続的な空腹時高血糖(数日以上にわたる180 mg/dl 以上)
・持続的な尿糖陽性

猫の診断基準
・特徴的な臨床症状(多飲、多尿、体重減少)
・持続的な空腹時高血糖(数日以上にわたり300 mg/dl 以上)
・持続的な尿糖陽性
<身体検査>
糖尿病の動物の栄養状態は様々で、痩せていることが多いですが標準~肥満の動物もいます。また、お水を飲む量が増えている場合は注意が必要です。

<血液検査>
血糖値を測定し、持続的に高血糖の場合は糖尿病の可能性が高いです。健康診断の際に見つかることも多いです。食後は血糖値が上昇するため、空腹時(最低8時間の絶食)で検査する必要があります。
<尿検査>
無治療の糖尿病の動物では尿糖が陽性になります。また、尿にグルコースが含まれるため比重は高くなります。血液検査で高血糖が見られた場合は尿検査を行い、確定診断をつけていきます。

治療法について

インスリン療法
血糖値を下げるためにインスリン注射が必要になります。インスリンは一般的に食後1日1~2回、毎日同じ時間に投与します。始めは血糖値の増減を確認しながら、血糖値曲線を描き、どの程度のインスリンが必要なのかを判断していきます。
インスリンを過剰に投与すると低血糖のリスクがあります。低血糖は命に関わる可能性があるため、投与量やタイミングは慎重に管理し、必ず獣医師と相談しながら進めましょう。
当院で使用している薬:ランタス、プロジンク、ノボリン、レべミルなど

猫の経口治療薬(SGLT2阻害剤):センベルゴ
センベルゴは、猫の糖尿病治療のために開発された経口投与可能な新薬になります。従来のインスリン注射とは異なり、1日1回の投与で血糖値の管理が可能となります。この薬は、特にインスリン注射の難しい猫や、飼い主様の負担を軽減したい場合に有効です。
※適応にならない糖尿病の子もいます。


食餌療法
血糖値を安定させるためには、犬や猫それぞれに合った食事療法が必要です。
・犬の場合:低炭水化物・高繊維質のフード
・猫の場合:高たんぱく・低炭水化物のフード
また、食事のタイミングは1日2回、インスリン注射のタイミングに合わせて与えるのが理想的です。不規則な時間に与えると血糖値が不安定になるため注意しましょう。決められた量を決められた時間に食べきることによって血糖をスムーズにコントロールできます。おやつなどの間食もやめましょう。


体重管理
肥満は糖尿病の大きなリスクになります。適度な運動は体重を適切に保つだけでなく、血糖値の安定にも役立ちます。また、筋肉量が増えることでインスリンの働きが良くなる効果も期待できます。

まとめ
糖尿病では、基本的に生涯での治療が必要となりますが、血糖値や基礎疾患などの適切な管理ができていれば、ある程度の制限はありますが普通の子と同じ生活を送ることが可能です。また、猫ちゃんの場合は、インスリンが自分できちんと産生できるようになれば寛解することもあります。
糖尿病のみに関わらず、色々な病気の予防のためにも、適度な運動や適切な食事量を維持するなど生活習慣を正しくすることは大切です。
また、定期的な健康診断や、おかしな症状があった場合にはすぐ受診するなどを意識していただくと病気の早期発見にも繋がることがあります。
他の内分泌疾患について⇨こちらから

Q&A
Q. 犬と猫の糖尿病の違いはありますか?
A. 犬ではインスリンが分泌できないⅠ型糖尿病が、猫ではインスリンの効きが悪くなるⅡ型糖尿病が多く認められます。
Q. よく見られる症状は何ですか?
A. “水を大量に飲む”、”尿の量が増える”、”ご飯は食べているのに痩せてくる”がよく認められる症状になります。糖尿病が進行して糖尿病性ケトアシドーシスに陥った場合には、食欲不振、元気消失、嘔吐などが認められる場合があります。
Q. 糖尿病になった場合は生涯薬が必要になりますか?
A. 犬の場合はインスリンが分泌できないⅠ型糖尿病のため生涯のインスリン治療が必要になります。対して、猫の場合は何らかの原因効きが悪くなるⅡ型糖尿病のため、適切な治療によって寛解状態になればインスリン治療が必要なくなる場合があります。
Q. 糖尿病は治りますか?
A. 猫の場合は何らかの原因でインスリンの効きが悪くなっているⅡ型糖尿病のことが多いため、適切な治療によって寛解状態になればインスリン治療が必要なくなる場合があります。
Q. 糖尿病の予防に重要なことはありますか?
A. 糖尿病の予防には食事の偏りや運動不足などに気遣う必要があります。また、日常的な症状を良く観察していただき、少しでもおかしなところがあれば、すぐ受診していただくことが大切になります。
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