ご予約はこちら
045-932-5151
2023年10月23日

猫の会陰尿道造瘻術

 尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。

 

尿石症に使用するサプリメント

 ストルバイト結石はサプリメントや食事療法で溶解することが出来る結石ですが、食事に好き嫌いがあったり、体質的に結石ができやすい猫ちゃんでは治療がうまくいかないことがあります。細かな砂状の結石が大量にあると、尿道閉塞を起こしてしまい尿が出せずに急性腎障害を起こしてしまいます。

 

 

 

膀胱内に貯留する砂状の結石
膀胱内から回収した結石

 そういった内科管理が難しい子では手術で膀胱内の結石を取り除く方法もありますが、時間とともに再発することが多いです。その場合は尿道閉塞を防ぐ緩和的な手術として「会陰尿道造婁術」を実施することがあります。尿道の一部を切開して開口部を太くし、結石がつまらないようにしてあげる手術です。

 

 実際に手術をした症例の外貌です。多頭飼育のため内科管理が困難で、何度も尿道閉塞を繰り返していましたが、術後はしっかり尿が出るようになりました。

 当院では包皮筒状利用法を用いて手術をしますので、一見して普通の猫ちゃんと同じようにみえます。

 

 

 

 この方法だと手術の手技はやや煩雑になりますが、術後の自傷行為による尿道開口部の狭窄が起きにくいため、再手術のリスクが低くなります。

 会陰尿道造瘻術を実施することで膀胱炎や結石が治るわけではありませんので、内科管理は必要ですが、尿道閉塞を起こすリスクは大幅に軽減されます。繰り返し尿道閉塞を起こしていると腎臓にダメージが蓄積して早い段階から慢性腎臓病になり、寿命を短くしてしまう可能性がありますので、尿石症でお困りの方は一度ご相談いただければと思います。また、膀胱内の結石を小さな傷で摘出する低侵襲手術も実施していますので、ご参考にしていただければと思います。

その他の記事

  • 犬アトピー性皮膚炎|病態について

    アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…

    11か月前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    5年前
  • 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)

    瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあります。この瞬膜の裏側に存在するの…

    2か月前
  • 鼻梁にできた多小葉性骨腫瘍

    多小葉性骨腫瘍は犬の頭蓋骨にできることの多い骨の腫瘍です。局所で拡大し脳を圧迫することで神経症状を示すことも少なくありません。今回は鼻梁部(鼻と頭蓋骨の間)にできた多小葉性…

    2年前
  • 犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫

    犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半…

    1年前
  • 犬・猫の去勢手術

    【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…

    2年前
  • 猫の子宮蓄膿症は若い子でも発症する?原因と治療について。

    「子宮蓄膿症」とは、避妊手術をしていない女の子の犬/猫ちゃんの子宮に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。 今回は猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。 …

    11か月前
  • 胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例

    胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である…

    2週間前
  • 呼吸器科

      『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およ…

    2年前
  • ノミ・ダニ予防

    ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…

    2年前