猫の尿管結石の症例
猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)。この状態が続くと腎臓の正常な細胞が破壊されていき、腎機能が急激に悪化してしまうため緊急的な治療が必要になります。
治療法としては点滴や結石を溶解するサプリメント等の内科治療もありますが、反応が乏しいことが多く、その場合は外科的に対処する必要があります。
外科手術の方法としては、尿管切開術、尿管膀胱新吻合術、尿管ステントや皮下尿管バイパス装置(SUBシステム)の設置などが挙げられます。尿管切開術や尿管膀胱新吻合術は縫合部位の狭窄により再発が起こることが懸念されています。一方、尿管ステントやSUBシステムなどのインプラントは再発リスクが少ない代わりに感染を起こすリスクが高いとされています。
今回は尿管切開により結石を摘出し、良好な経過を得られた猫の症例をご紹介します。
症例 猫 5歳 去勢雄 スコティッシュ・フォールド 以前から腎臓・尿管内に結石があり、不完全閉塞を繰り返している。幸い、腎盂の拡張は軽度であったため、尿管内の結石に対して食事療法やサプリメント等の内科治療を試みるも完全閉塞を起こし、外科手術を実施した。





実際の手術の様子↑↑ 尿管内から1mmほどの結石を摘出、髪の毛ほどの細い糸で尿管を縫合した様子。
尿管結石摘出後は腎臓の数値も改善傾向になり、腎臓の結石が再閉塞する事なく良好な経過が得られている。


今回は尿管切開により結石を摘出し、再閉塞する事なく良好な経過が得られた症例を紹介しました。SUBシステムなどのインプラントは再閉塞が少ない分、感染リスクが高いことに加えて、定期的なメンテナンスが必要になるなどのデメリットもあります。今回の症例では腎臓にも結石があるため、これらの結石が尿管内に移動して再閉塞を起こす可能性はありましたが、症例の年齢等も考慮してインプラントの設置はせず、尿管切開のみを実施しました。手術法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、結石の数や症例の状態に合わせて最適な手術方法を選ぶことが重要です。
また、尿管結石は片側の場合は非特異的な症状(なんとなく元気がない、いつもより動きがにぶい)しかみられない場合もあり、気付かないうちに腎臓の機能が低下していることもあります。何か異変を感じたら、早めに動物病院を受診して超音波検査などを実施してもらうと良いでしょう。
その他の記事
-
腹腔鏡下肝生検
ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …
2年前 -
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?
最近 ”少し元気がない"や"食欲がいつもよりない"などの症状が見られることはありませんか? 副腎の病気には機能が下がってしまう、副腎皮質機能低下症(アジソン病)とい…
9か月前
-
犬の椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫すること…
3年前 -
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~治療編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症例で必要な治療について解説していきます。 副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、生涯にわたる投薬が必要になりますが…
9か月前 -
心室中隔欠損症(VSD)
心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。 全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…
2年前 -
”麻酔前検査”をお勧めしています
手術をするにあたって、人の場合と同様に犬ちゃん猫ちゃんにも全身麻酔をかける必要があります。麻酔前検査では、この全身麻酔が安全にかけられるかどうかを評価するための検査となり…
3年前 -
犬や猫だけでなく、ヒトにも感染する”SFTS”について
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは、マダニを媒介してヒトや動物に感染するウイルス性の人獣共通感染症です。2013年に初めて国内患者の発生が認められ、西日本を中心に発生…
22時間前 -
肺高血圧症
今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)』です。
肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い…6年前 -
消化器科
『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…
3年前 -
2026年 春の健康診断の結果をまとめました!
この春も多くのわんちゃん、ねこちゃんに健康診断をご利用いただき、ありがとうございました。健康診断は、見た目は元気でも隠れている病気や体の変化を早期に見つけるための大切な機会…
2週間前
