腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例
腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。
今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、内科治療により尿管が疎通した症例を経験したのでご紹介します。
症例は15歳の猫、避妊雌、嘔吐と元気食欲の消失で来院されました。
血液検査では白血球の上昇(WBC=40580/µl:基準値〈5500~19500〉)、腎数値の上昇(CRE=12.4 mg/dl:基準値〈0.8~1.8〉)が認められ、超音波検査では右腎臓の重度萎縮と左腎臓の水腎症が認められました。左側の尿管は拡張しており、腎臓から出てすぐの場所に高エコーの閉塞物が認められました。X線検査上は腎結石が認められましたが、尿管には結石の陰影は認められませんでした。




尿管閉塞により重度の腎障害が起きていたため、緊急的に超音波ガイド下で経皮的に腎瘻チューブを設置しました。腎瘻チューブ設置時に腎盂内の尿を抜去したところ、尿に混ざって膿のようなものが採取されました。採取した尿を細菌培養検査に提出し、腎瘻チューブを固定して尿路を確保、静脈点滴と抗生剤による治療を実施しました。


経皮腎瘻カテーテル | 製品情報 | cafeline – 有限会社オーキッド (okid.jp)
腎瘻チューブから尿が排泄され、腎臓の数値は徐々に下がっていきました(CRE=2.78 mg/dl)。超音波検査では閉塞物が確認できなくなったため、腎瘻チューブから尿管の造影検査を実施したところ、尿管の疎通性が確認されました。これにより尿管切開やSUBsystem設置などの外科手術は必要ないと判断し、数日経過を見た後に退院となりました。


今回は閉塞物が結石なのか、炎症により出てきた膿なのか超音波検査では判断できませんでしたが、腎盂穿刺により腎盂内の尿を採取したことで、膿による閉塞の可能性が高いと判断できました。また腎瘻チューブを設置したことで尿路の確保ができ、腎臓の数値を下げることが可能でした。最終的に尿管造影を実施し、尿管が疎通していなければ外科手術に進む予定でしたが、内科治療に反応して閉塞が解除されたため手術を回避することができました。
このように水腎症が認められた時に重度の腎障害が併発している状態では腎瘻チューブを設置することで手術を回避、もしくは麻酔リスクを下げた状態での手術が可能になるかもしれません。
その他の記事
-
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
3年前 -
尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌)
犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…
2年前
-
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
3年前 -
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
7年前 -
「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!
こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…
1年前 -
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…
7年前 -
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
2年前 -
猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…
4年前 -
口腔内腫瘤に対して下顎部分切除を実施した犬の1症例
犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも、悪性黒色腫は悪性度の高い口腔内腫瘍の中で最も発生率の高…
3か月前 -
犬の椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫すること…
3年前
