ご予約はこちら
045-932-5151
2020年5月13日

肝生検

健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか?

猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感染症、炎症性、腫瘍性など様々な原因で発生します。比較的重症なものが多く、場合によっては亡くなってしまうこともあります。今回は健康診断で肝臓の数値が高く、徐々にその肝酵素の数値が上昇し進行してきたため重症化する前に診断、治療を行った症例をご紹介します。

雑種 5歳 未去勢雄
健康診断で肝臓の数値の上昇が認められました。一般状態は良好で見た目は全く問題ありませんでした。血液検査や腹部超音波検査に加え、甲状腺ホルモンの測定などを行いましたが大きな異常はなく経過観察としました。その後徐々に肝酵素が上昇し、次第に食べムラが認められたため開腹下にて肝生検を実施しました。

<肝生検とは>
肝臓の一部を切り取り病理検査に供します。開腹で行う検査ですので抵抗もある飼い主様も多いと思います。しかし得られる情報はとても多く、適切な時期に行えばその後の治療方針を大きく左右する検査になります。
 

結果は『リンパ球性胆管肝炎
この病気は肝臓の中ので炎症が広がっていく病気です。治療には適切なステロイドを必要としますが、状態によっては反応せず様々な合併症を起こし死に至る怖い病気です。
認められる症状は食欲不振、嘔吐、下痢、など一般的なものが多く、数日前から食欲がない元気がないといった主訴で来院されることが多いです。黄疸が認められることが多い病気でおしっこが濃くなったと来院されることも少なくありません。

今回は検診にていち早く異常を見つけられたことが幸いし、早い段階で診断できたおかげで適切な治療を行うことができました。重症化する前に病気を鎮静化できたおかげで今も元気に過ごしてくれております。

その他の記事

  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    6年前
  • 猫の尿管結石の症例

    猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…

    3年前
  • 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫

     胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁の貯留を行う臓器で、方形葉と内側右葉に埋まるように位置しています。胆嚢から発生する疾患には胆石、胆泥、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢炎などがあります。…

    3年前
  • 膝蓋骨脱臼

    膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…

    5年前
  • 気管支鏡を実施した猫の症例

     呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…

    3年前
  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    3年前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    7か月前
  • アレルギー食|たくさんありすぎてどれを選んでいいか分からない?種類と使い分けについて

    ペットショップや薬局のペットフードコーナーで「アレルギー体質の子向け」と書かれたフードを見かけたり、獣医さんから「アレルギーかも」と言われたことはありますか? アレル…

    2か月前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    5年前
  • 猫の会陰尿道造瘻術

     尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。   …

    2年前