- ホーム
- 症例
- 消化器の病気/総合診療科
- ワクチンによるアナフィラキシーショック
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。
病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、
恐ろしい感染症に対する抵抗力(免疫)を得ることができるため、
感染そのものを防ぐことができたり、感染しても重症化しづらくなるといった
とても重要な効果があります。
しかし、残念ながらワクチンの安全性は100%とはいえず、
まれに副反応(ワクチンアレルギー)が起きてしまうこともあります。
ワクチンアレルギーは接種後すぐに現れる「即時型アレルギー」と
接種後しばらくしてから現れる「遅延型アレルギー」の2種類に分けられます。
即時型アレルギーが起こってしまった場合は、アナフィラキシーショックに陥り、
すぐに対処しなければ死亡してしまうこともあります。
(※アナフィラキシーショックは食べ物、薬、昆虫やは虫類の毒などでも起こります。)
主な副反応の発生頻度は下の表の通りです。

今回はワクチン副反応の中でも最も重篤であるアナフィラキシーショックについてお話します。
実際にアナフィラキシーショックを起こしてしまうワンちゃんネコちゃんはめったにいませんが、
当院でも今年7種ワクチンを接種した後にアナフィラキシーショックに陥った例が1件発生しました。
本症例をもとに、飼い主さまがアナフィラキシーショックに気づきやすいポイントや
起きてしまった時の対処についてご説明します。

今回の症例でワクチン接種後10分程度でショックに陥ったように、
アナフィラキシーショックは通常ワクチン接種後10分~1時間以内に発症します。
虚脱(ぐったりする)
チアノーゼ(舌が青くなる)
低体温
低血圧
呼吸困難
嘔吐
下痢
などの症状が見られます。
アナフィラキシーショックは一刻を争う緊急事態です。少しでも病院での処置が遅れてしまうと
そのまま亡くなってしまう場合もあります。
低血圧や低体温といった徴候は、飼い主さまが気づくことは難しいかもしれません。
今回の症例の飼い主さまは、嘔吐と虚脱を見て緊急事態と判断して来院してくださいました。
「ぐったりする」「吐いた」「呼吸が苦しそう・おかしい」など、
身体検査をしなくても目に見えてわかる症状が出た場合は迷わず来院または病院に連絡しましょう。
★ワクチン接種の注意点
今までワクチン接種をした後に体調に問題が起きたことがなかったとしても、
副反応が起きるリスクが0になることはありません。
特にワクチンを接種した後に少しでも体調に変化が起きたことがある
ワンちゃんネコちゃんは、次の接種でより重篤な副反応を引き起こす可能性が比較的高くなります。
そのようなワンちゃんネコちゃんの場合、毎年ワクチンを接種するのではなく、
抗体価の測定がより積極的におすすめされます。
血液検査で病原体に対する抗体価(抵抗力)を測定して、十分に抵抗力があることが分かれば
その年はワクチンを接種する必要がありません。
抗体価を測定すること生涯でワクチンを接種する回数を減らすことができるかもしれません。
ご興味のある飼い主さまはぜひ獣医師にご相談ください。
※抗体価を測定することができる感染症の種類には制限があります。
その他の記事
-
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…
2年前 -
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…
5年前
-
フィラリア予防
毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要なの…
2年前 -
膝蓋骨脱臼の整復
膝蓋骨脱臼は小型犬に多い整形疾患です。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝から外れてしまうことで膝関節伸展機構が正常に機能せず、膝をうまく伸ばせない状態になってしまいます。典型的な臨床…
2年前 -
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…
2年前 -
副腎腫瘍
副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…
5年前 -
腫瘍科
獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。 犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…
2年前 -
犬・猫の混合ワクチン
コロナの影響によって”ワクチン”という言葉をよく耳にするかと思います。わんちゃん、ねこちゃんと一緒にいると、はがきなどによって混合ワクチンのお知らせが届くと思います…
2年前 -
うっ血性心不全/心原性肺水腫(犬)
心源性肺水腫とは、僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症などの心臓病によって心臓内の血液の鬱滞が悪化する事により、肺に血液中の水が押し出され呼吸困難を生じる二次的な病態で…
5年前 -
犬・猫の去勢手術
【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…
1年前