ご予約はこちら
045-932-5151
2024年8月19日

ワクチンによるアナフィラキシーショック

毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。

病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、

恐ろしい感染症に対する抵抗力(免疫)を得ることができるため、

感染そのものを防ぐことができたり、感染しても重症化しづらくなるといった

とても重要な効果があります。

しかし、残念ながらワクチンの安全性は100%とはいえず、

まれに副反応(ワクチンアレルギー)が起きてしまうこともあります。

ワクチンアレルギーは接種後すぐに現れる「即時型アレルギー」と

接種後しばらくしてから現れる「遅延型アレルギー」の2種類に分けられます。

即時型アレルギーが起こってしまった場合は、アナフィラキシーショックに陥り、

すぐに対処しなければ死亡してしまうこともあります。

(※アナフィラキシーショックは食べ物、薬、昆虫やは虫類の毒などでも起こります。)

主な副反応の発生頻度は下の表の通りです。

今回はワクチン副反応の中でも最も重篤であるアナフィラキシーショックについてお話します。

実際にアナフィラキシーショックを起こしてしまうワンちゃんネコちゃんはめったにいませんが、

当院でも今年7種ワクチンを接種した後にアナフィラキシーショックに陥った例が1件発生しました。

本症例をもとに、飼い主さまがアナフィラキシーショックに気づきやすいポイントや

起きてしまった時の対処についてご説明します。

今回の症例でワクチン接種後10分程度でショックに陥ったように、

アナフィラキシーショックは通常ワクチン接種後10分~1時間以内に発症します。

虚脱(ぐったりする)

チアノーゼ(舌が青くなる)

低体温

低血圧

呼吸困難

嘔吐

下痢 

などの症状が見られます。

アナフィラキシーショックは一刻を争う緊急事態です。少しでも病院での処置が遅れてしまうと

そのまま亡くなってしまう場合もあります。

低血圧や低体温といった徴候は、飼い主さまが気づくことは難しいかもしれません。

今回の症例の飼い主さまは、嘔吐と虚脱を見て緊急事態と判断して来院してくださいました。

「ぐったりする」「吐いた」「呼吸が苦しそう・おかしい」など、

身体検査をしなくても目に見えてわかる症状が出た場合は迷わず来院または病院に連絡しましょう。

今までワクチン接種をした後に体調に問題が起きたことがなかったとしても、

副反応が起きるリスクが0になることはありません。

特にワクチンを接種した後に少しでも体調に変化が起きたことがある

ワンちゃんネコちゃんは、次の接種でより重篤な副反応を引き起こす可能性が比較的高くなります。

そのようなワンちゃんネコちゃんの場合、毎年ワクチンを接種するのではなく、

抗体価の測定がより積極的におすすめされます。

血液検査で病原体に対する抗体価(抵抗力)を測定して、十分に抵抗力があることが分かれば

その年はワクチンを接種する必要がありません。

抗体価を測定すること生涯でワクチンを接種する回数を減らすことができるかもしれません。

ご興味のある飼い主さまはぜひ獣医師にご相談ください。

※抗体価を測定することができる感染症の種類には制限があります。

その他の記事

  • 炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症

    炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
    慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…

    6年前
  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    3年前
  • 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬

    胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …

    2年前
  • 肥満細胞腫

    肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…

    3年前
  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    6年前
  • 犬・猫の避妊・去勢手術におけるメリット・デメリット

    新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…

    2年前
  • 短頭種気道症候群

    短頭種気道症候群とは多くが先天性で、パグやフレンチブルドッグなど短頭種に生じる疾患の総称です。外鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、気管低形成を先天的に生じ、持続的な気道抵抗の増加によ…

    2年前
  • 犬の乳腺腫瘍

     犬の乳腺腫瘍とは、雌犬で一般的に認められる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占め、約半数が悪性です。臨床徴候としては乳腺内に単一または多発性に結節を認め、悪性の場合は急速…

    2年前
  • 全耳道切除・鼓室法切開

    慢性外耳炎・中耳炎  慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…

    3年前
  • 泌尿器科

     泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。  高齢になると腎臓…

    2年前