ご予約はこちら
受診ご希望、獣医師の方 045-932-5151
企業、法人の方 090-6770-5244
2023年11月26日

慢性腸症

 

慢性腸症の定義

 

『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明の消化器疾患と定義されます。そのため、臨床徴候の経過、除外診断、病理学的特徴、治療反応から多角的に評価して臨床医が診断する疾患名である(Veterinary Board vol 43, EDUWARD Pressより転用 )。』

との記載があります。

消化器症状を呈する疾患は多岐に渡るため原因の精査には様々な検査や試験的治療が必要になります。

Clinic note (EDUWARD PRESS No.185)より引用

 

消化器疾患に対しては『消化器科』で紹介させていただいたように便検査や血液検査、画像診断などを行い診断を勧めていきます。実際にどのように診断し、治療を行っているかをご紹介します。

 

症例1 7か月 M.シュナウザー

下痢と元気消失、食欲不振を主訴に来院されました。一般便検査では異常なくジアルジア検査陽性だったためフェンベンダゾールを処方いたしました。一週間後には元気も戻り食欲も安定しましたが、軽度の軟便は改善しませんでした。整腸剤への反応も乏しかったのですが飼い主様との相談の上経過観察としました。

その後定期的に食べムラ、嘔吐、軟便をくりかえしているとの事で再度来院されました。血液検査には異常は検出されませんでした。腹部エコー検査では消化管以外の臓器には異常を認めず、小腸には著変がありませんでしたが空腸リンパ節と結腸リンパ節に軽度の腫大を認めました。

結腸リンパ節の腫大
空腸

飼い主ここまでの検査で消化器以外の疾患はあらかた除外できている事、飼い主様からの稟告や年齢も考慮したうえで抗菌薬反応性腸症及び食事反応性腸症として試験的治療をする必要があることを伝えたうえで感染症の除外のために便のPCR検査を行いました。

    IDEXX社 犬下痢パネル

PCR検査では異常を認めなかったため、食事反応性腸症に対しての試験的治療として Royal Canan のアミノペプチドフォーミュラを使用しました。

 最初は食べつきがあまり良くなかったとの事でしたが、徐々に食べれるようになりそれに伴って軟便の症状は改善を認めました。また嘔吐も消失したため暫定診断として食事反応性腸症と診断しました。

その他の記事

  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    3年前
  • 先天性門脈体循環シャント

     先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…

    3年前
  • 口腔内腫瘤に対して下顎部分切除を実施した犬の1症例

    犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも、悪性黒色腫は悪性度の高い口腔内腫瘍の中で最も発生率の高…

    2か月前
  • 若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは?

    皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されてい…

    1年前
  • 肝中央区域の腫瘍および胆嚢を一括切除した犬の一例

    近年では、獣医療の発達とともに犬猫の長寿化が認められるようになり、腫瘍と診断される子も増えてきています。腫瘍の中でも肝臓腫瘍は稀であり、肝臓自体は”沈黙の臓器”とも呼ばれ…

    4か月前
  • 心タンポナーデ

     心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、…

    3年前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    7年前
  • 腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例

    腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…

    4年前
  • 消化器科

    『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…

    3年前
  • 胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例

    胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である…

    1年前